Arsenyevich

ダムネーション 天罰のArsenyevichのネタバレレビュー・内容・結末

ダムネーション 天罰(1988年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

タルベーラ作、2本目の鑑賞。
今日は朝6時台から目まぐるしいスケジュールが続き、ようやくひと段落。こんな1日の終わりには、異様にタルベーラの長回しが心地よい。

不必要な長回しだなんて、
監督はただ好きでやってるだけなんだから。小説を読む様に静かに語りかけてくるこの世界観に身を落とし込みたいだけ。

話としては、いい歳した中年のオッサンとオバさんのしょうもない不倫の話なのに、WKW的な鏡を使った撮影技法、時間軸を超えた部屋から部屋へのドリーショットを用いて、しっかりと見せつけてくれる。

酒場の食事シーンが1番印象に残った。
決して心休まる会話ではないのに、ビリヤードの玉突きも食器の奏でる音も、全てが小箱のように美しく響き渡り、淡い空間を作り出す。オルガン弾きの悲しい音色もバチハマり。

「窓を伝う雨を見るのが好き」
なんて素敵なセリフだろうか。
もう久しくそんな風に落ち着いて景色を見た記憶がない。

この現代に、ここまで奥ゆかしく怪しげな白黒の世界観を作り上げる堅強な頑固さ。
強いて言えば、霧も雨も降り頻るのに、タルコフスキーのような現実を超越した幻想感は皆無。
タルベーラの場合はあくまでも現実に根差した作り込みを貫き通す。その中に潜む人々の僅かな心の揺れが、突き刺さるかどうか。
サタンタンゴに比べたら全然カット割は早いし見やすかったな。あれは長過ぎっしょ。
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