kkkのk太郎

デッドプール2のkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

デッドプール2(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

アメコミヒーロー映画『X-MEN』シリーズの第11作にして、アンチヒーローのデッドプールが活躍する『デッドプール』シリーズの第2作。

サイボーグ戦士・ケーブルが未来からやってくる。彼の標的である少年ラッセル/ファイヤーフィストを守るため、デッドプールは「X-フォース」という新チームを結成する…。

○キャスト
ウェイド・ウィルソン/デッドプール…ライアン・レイノルズ(兼製作/脚本)。
チャールズ・エクゼビア/プロフェッサーX…ジェームズ・マカヴォイ。
ハンク・マッコイ/ビースト…ニコラス・ホルト。

新たなキャストとして、サイボーグ戦士のケーブルを演じるのは『メン・イン・ブラック3』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のジョシュ・ブローリン。
ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドの恋人、ユキオを演じるのは『BECK』『キセキ あの日のソビト』の忽那汐里。
X-フォースのメンバーである酸性のゲロを吐く男、ツァイトガイストを演じるのは『アトミック・ブロンド』『IT/イット ”それ”が見えたら、終わり。』のビル・スカルスガルド。
X-フォースのメンバーである透明人間、パニッシャーを演じるのは『セブン』『オーシャンズ』シリーズの、名優ブラッド・ピット。
また、ケーブルに車を奪われる男役として『オーシャンズ』シリーズや『インターステラー』の、名優マット・デイモンがカメオ出演している。

製作総指揮はスタン・リー。

超重厚かつ感動的な名作『LOGAN/ローガン』(2017)により、17年もの長きに渡り紡がれてきたウルヴァリンのサーガはその幕を引いた。
物語は語り尽くされたかのように思えた…。しかし、『X-MEN』シリーズは死に絶えてはいなかった。
という訳で、ウルヴァリンに次ぐ、いや人気だけでいえばウルヴァリンを凌ぐキャラクターであるデッドプールが彼の代わりに登板し、シリーズの延命に努めます。

前作『デッドプール』(2016)は確かに面白かった!
…が、欲を言えばもっと定石を崩すような型破りのお話を観てみたかった、とも思った。
続編となる今作ではその不満点を解消。デップーに相応しい、下ネタ・メタネタ・バイオレンスを混ぜて煮込みに煮込んだカオスのガンボスープのような作品に仕上がっています。

冒頭一発目のネタから驚かされた。
まさか『ローガン』のあの感動的なクライマックスを弄るとは!💦
その後もまあメタネタや映画ネタが出るわ出るわ。
『スター・ウォーズ』や『テッド』、『バットマンvsスーパーマン』『氷の微笑』『アナと雪の女王』などなど…。とてもじゃないけど全ては理解出来ません。
ケーブルに対して”サノス”と声をかけたり(ジョシュ・ブローリンは「MCU」シリーズでは宿敵サノスを演じている)、シリーズお馴染みの迷惑機械「セレブロ」で遊んだりとやりたい放題。
そもそもケーブルの設定や見た目からして完全に『ターミネーター』(1984)のパロディだし。とにかく今回はふざけ倒してます。
ちなみにX-フォースの面々、日本語吹き替えだと声優陣がアベンジャーズと一緒。ベドラム=ソー(三宅健太)/シャッタースター=キャップ(中村悠一)/ツァイトガイスト=ブラックパンサー(田村真)/ピーター=ドクター・スタレンジ(三上哲)。日本の音響チームも大いに遊んでます💦…でも、ここまでやるならケーブルの声優は銀河万丈さんにして欲しかったよね。まあ大塚明夫さんに不満はないんだけど。

オルタナティブな息子を救うことで喪失に苦しむ魂に平穏をもたらすという本作の構造、これはおそらく意識的に『ローガン』に似せて作ったのだろう。つまり本作は『ローガン』のパロディ映画という側面もある訳だ。
この点は共通しているものの、映画の味わいは全くの正反対。ウルヴァリンとデッドプールの性格の違いが、映画そのものにクッキリと表れているというのは大変に興味深い。それでいて同じシリーズの中にキチンと収まっているのだから、『X-MEN』シリーズの懐の深さには驚かされる。

お下品でカオスな作品であることは間違いないのだが、押さえるべきポイントはしっかりと押さえられている。
バトルやキャラクターの成長、チームワークを活かした連携プレイといった見せ場が前作以上に盛り込まれており、クライマックスにはジーンとさせられたりホッコリさせられたり…。
とにかく観客の情感を絶えず揺さぶり続けるので、退屈している暇がない。娯楽映画としては満点と言っても良い出来なのではないでしょうか。

前作の大ヒットを受け、今作では予算が大幅にアップ。
対前作比100%増という厚遇を受けている。
そのためカーアクションの派手さや役者陣の知名度は間違いなくスケールアップしている。
前作では予算の都合上「恵まれし子らの学園」に全然ミュータントが居ないことをネタにしていたが、今回はそれを逆手に取り、過去のメインキャストがこっそり隠れているというネタを仕込んできている。この周到さがニクいっ!
一回観ただけでは「えっ!今のまさか?」という状態だったが、改めて一時停止して確認してみるとマカヴォイやピーターズやホルトがいる!キャストの無駄遣いすぎる💦

ビル・スカルスガルドやテリー・クルーズの扱いの雑さもさることながら、まさかのブラピ起用にはびっくり仰天!出演時間約1秒っ💦
本作の監督デヴィッド・リーチは元スタントマンで、ブラピのスタンドダブルも務めていた。その縁もあって今回出演してくれたんだろうけど、この使い方は無駄遣いが過ぎるだろーーっ!!事前に知っていなかったらほぼ間違いなく見逃しちゃうね。
ちなみに前作の中でウェイド・ウィルソンが『ファイト・クラブ』(1999)のブラピにそっくりなファッション&髪型で登場するシーンがあったけど、まさかあのわかる人にだけわかるパロディを次回作への伏線にしちゃうとは…。ライアン・レイノルズのネタへの貪欲さ、恐るべし…。

それともう一つ言わせてくれ。マット・デイモンさん、あんたマーベル好きすぎるだろっ💦『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)に引き続きこっちでもカメオ出演。もうメインキャスト演じちゃいなよ〜。
けど、今回のカメオは流石に見つけるの難しすぎる。初見じゃ絶対に気づかんし、改めて見てみても特殊メイクのクオリティが凄すぎて本人なのかどうか全くわからん。これマット・デイモン使う意味ないんじゃ…?
ちなみにブラピ&デイモンの『オーシャンズ』コンビはジョージ・ミラー監督作品『ハッピー フィート2 踊るペンギンレスキュー隊』(2011)にも揃ってゲスト出演しています。…オキアミ役で😅
この2人って結構仲良しなんですね〜。

『X-MEN:アポカリプス』(2016)で思わせぶりに描写しておきながら投げっぱなしになっていた「エセックス社」の伏線を回収したり、ジャガーノートを再登場させたりとシリーズファンへの目配せも抜かりがない。
特に感心したのはケーブルが未来滅亡を阻止するために過去に残ってくれたこと。これで『ローガン』最大のモヤモヤポイント、「あれだけ頑張ったのに結局ミュータント滅びるのかよっ!」も綺麗に解決。
実は本作、ただのおバカ映画のようでいてちゃんとシリーズのことを考えてくれている良心的な作品なのです😊この辺も『ローガン』とは正反対ね。

とまぁ満足はした。面白いかつまらないかで言えば間違いなく面白い!!
…なんだけど、ぶっちゃけちょっとギャグのセンスがね…。個人的に合わなかったんですよね…😓
あれだけやる気満々で集結したX-フォースが速攻で在庫一掃処分されたところとか(しかもBGMは『アイアンマン』シリーズでお馴染みのAC/DC!)エンディングの大胆すぎる歴史修正とか、めっちゃ笑ったところも沢山あったんだけど、基本的なノリは全然好みとは違う。
前作では割とさらっと流していた下ネタやメタネタが、今回はとにかくくどいっ!
無駄な下ネタがとにかく多く、しかもそれが全然笑えない。新しい足が生えてきたって件とか、長い割にクスリとも出来なかった。ボケもツッコミも過剰すぎてテンポが悪い。
それに、「ここでそのギャグ要る?」みたいな展開も多い。デッドプールが英雄的な最期を迎える…ようでなかなか迎えない、というギャグ。それ自体は面白いんだけど、タイミングがおかしくない?クライマックスでやることかそれ?

今回からライアン・レイノルズが脚本にも参加。多分こういうねちっこいお笑いはレイノルズの趣味なんだろう。
日本でも自分のことを面白いと思っている俳優がバラエティ番組に出演するとなんか痛々しい空気になったりすること、あるじゃないですか。「お前のそのトークで笑うのってファンの女の子だけだからな💢」みたいな。今回はそういう寒さをちょっと感じたなぁ…。
それと、今回はなんとなく福田雄一作品とかテレビアニメ『銀魂』(2006-2018)を思い出させる。多分内輪ネタで笑いを取る感じが似てるんだろう。このノリが強すぎて、正直置いてけぼりを食らってしまった。

それともう一点。
過去の『X-MEN』シリーズ同様、今回もマイノリティに対する差別や迫害に対抗する物語である。
それ自体は良いんだけどさ。人種差別を笑い飛ばす作品で日本人の描写がステレオタイプなのはちょっとモヤモヤする…。
ピンク髪の女の子でいつもニコニコ。英語力が低いのか、デップーとは「ハーイ」という会話しか交わさない。
…うーん、この絵に描いたような現代日本人描写。一昔前の出っ歯&メガネと五十歩百歩やろこんなん。
普通の映画ならこういう事に煩く言わないんだけど、これは『X-MEN』シリーズの一本な訳でね。もう少し多面的な人格をユキオには与えて欲しかった。これなら『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013)の時のユキオの方がまだ面白みがあったぞ…。

完成度は高くエンタメ要素は十分。過去作からのリファレンスも多く『X-MEN』シリーズファンには嬉しい作品だった。…が、笑いのツボが自分とは合っておらず辛い思いをする場面も多かった。
満足はしたものの、期待値を上回ることはなかった、というのが今回の総評。
『デッドプール3』の制作も始まっているようだが、次回作はもう少しギャグ要素をシェイプアップして欲しい。
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