千年女優

田園に死すの千年女優のレビュー・感想・評価

田園に死す(1974年製作の映画)
4.0
恐山の麓にある村に生まれた少年で、戦争で父を亡くしてからというもの過保護な母の愛にうんざりしてイタコに父の霊を呼び出させては愚痴を零す少年。二十年後には上京して映画監督になる彼が、閉塞的な村社会の中で村に訪れたサーカス団との出会いや近所の若妻と駆け落ちの約束を交わす少年時代を追憶する様を描いたドラマ映画です。

早稲田大学在学中に歌人としてデビューして、以後は劇団結成に小説執筆、映画制作と様々な芸術の分野で才能を発揮した寺山修司が、自らの生い立ちをベースに書き上げた詩集を自身の監督・脚本で映画化した日本アート・シアター・ギルド公開作品で、独創的な世界観が評価されて文化庁芸術祭奨励新人賞や芸術選奨新人賞を獲得しました。

のっけから黒装束に白塗りと数々のメタファーを用いたいかにもATGらしいアヴァンギャルドなアート映画で、更には劇中劇まで導入して観念的な物語を抽象化したまま最後まで完走します。誰のためでもない監督の胸中を吐露する個人映画で困惑させられますが、そのどれもが窮屈な村社会からの解放への飢餓を強烈に主張している一作です。
千年女優

千年女優