鮃サブロウ太

淵に立つの鮃サブロウ太のレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
4.5
同じ監督が手掛けた「よこがお」が印象的だったので本作も観たのだが、こちらのほうが断然好みだった。
「よこがお」でも感じたことだが、この監督の魅力は善悪を単純化せず、複雑なものを複雑なまま提示し観ている側に問いかけてくるところだと思う。そして、受け手もそういう創り手の思いを汲み取りたいと思わせるほど作品の質が優れていることである。
強烈な暴力性に訴えるわけでもないのに不気味な緊張感が漂い、最初のほうに出てくるすましたお祈りの場面など後半は見る影もない。現実に踏み躙られ、信仰さえ何の救いにもならないのである。
川原遊びでの悖徳感もたまらないが、1:36:00過ぎからの夫婦の会話も圧巻。劇中章江の腰のあたりが二度ほど露わになるが、その肉感はとてもぽっと出の女優には出せない。
ラストの手の込んだ作り込みには賛否あるかもしれないが、この作り込み感は全篇にわたり徹底しており、しかしそれがいささかのわざとらしさも感じさせず物語に浸透しているところが素晴らしい。