えんさん

ガール・オン・ザ・トレインのえんさんのレビュー・感想・評価

2.5

夫と離婚し、傷心のレイチェル。彼女の心の慰めは、毎朝通勤電車の窓から見る“理想の夫婦”だった。それは彼女が元夫となるトムと、新妻アナが2人の間に生まれた娘と暮らしている家の近くだった。しかしある朝、その妻の不倫現場を目撃してしまう。動揺したレイチェルは、近くの駅で降り、”理想の夫婦”の家に向かうが、その途中で記憶をなくしてしまう。気がつくと、彼女は道端に倒れ込み、大怪我をしていた。そして間もなく、その”理想の妻”の死体が近くから発見されるのだった。。45ヵ国でベストセラーとなった同名ミステリー小説を「ヘルプ 心がつなぐストーリー」のテイト・テイラーが映画化した作品。

「ヘルプ」では虐げられている黒人女性の地位復活という小さなストーリーを、丁寧に描ききったテイラー監督。本作自体は、サスペンス作品としては少々小粒かと思いますが、監督の持ち味でなかなか観る者を惹きつける作品になっていると思います。サスペンスなので、あまり話の核心に触れることができないのですが、キーになる3人の女性、主人公となるレイチェル、彼女の元夫と結婚したアナ、そして、事件の被害者となってしまう”理想の妻”のメーガンの女としてのつながり。先日見た「マイ・ベスト・フレンド」でも、男性には理解できないような女性の友情の深さを描いていましたが、きっと本作にある女性としてのつながりは(友情ではないものの)同じような線上にあるのかなと思います。男性を愛しく包んでくれる存在、子を育て、家庭を守り抜くための強さ、女性が女性であるために持っている要素が、物語として彼女らをつなげるシンパシーのようなものになっていると思います。

ただ、やはり作品を引いてみると、何か起こるぞ起こるぞと思わせぶりなところは至るところに見せますが、サスペンスものとしては小粒感が拭えないので、結果敵に迫力不足感がしてしまうのが否めません。原作モノであることが分かるのですが、映画オリジナルな事件要素をもう1つくらい加味して(例えば、”理想の夫”のほうの裏の顔みたいなものをあぶり出させるとか)みると、もう少し作品のボリューム感が出たかなと思います。それに主人公レイチェルが傷心なうえに、精神的にも不安定になっているところが感情移入しにくいのも残念なところ。これも原作通りなのかもしれないですが、3人の女性の中で一番中心となる人物なだけに、やはりもうひと工夫欲しかったかなと感じます。