一人旅

蜂の旅人の一人旅のレビュー・感想・評価

蜂の旅人(1986年製作の映画)
4.0
テオ・アンゲロプロス監督作。

養蜂家の旅を通じて、人間の老いと生を見つめるドラマ。
養蜂家スピロ(マルチェロ・マストロヤンニ)は旅の道中で少女と出会う。
若者と老人。それぞれの生き方のベクトルは真逆だ。
少女には過去がない。だから過去を振り返る必要などない。
少女が男友達と寝たり、立ち寄ったカフェで曲に合わせて一心不乱に踊るのは、若さゆえに生き方に迷いがあるからと同時に、過去による束縛が存在しないから。悪い意味を含め、少女は前を向いている。
一方、老人スピロは過去に生きている。
長年に渡る娘との確執、旧友との再会、そして故郷の生家を訪ねるスピロの姿に、これからも生き続けるであろう人間の生気はまるで感じられない。
年老いた人間に残された時間は、それまでの人生で抱えてきた過去の全てを納得のいくかたちで清算するために与えられた猶予期間なのかもしれない。
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