ロク

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめのロクのレビュー・感想・評価

3.9
東京を独特のビジュアルセンスで描いた「ロスト・イン・トランスレーション」やポップな映像と音楽でマリー・アントワネットの生涯を描いた「マリー・アントワネット」を手掛けガーリーカルチャーの旗手として一躍脚光を浴びたソフィア・コッポラ監督が初めて心理スリラーというジャンルに挑んだ本作は南北戦争末期アメリカ南部の深い森の中に佇む女子寄宿学園に負傷した若い北軍兵士が運びこまれたことにより男性を巡る女性同士の欲望や嫉妬が芽生えていく1970年にドン・シーゲル監督クリント・イーストウッド主演という男臭いコンビで映画化された心理サスペンス「白い肌の異常な夜」を女性監督ならではの心理描写を巧みに盛り込んで描いており、円熟期を迎えつつある監督の代表作となる作品だと感じました。その部分は彼女の特徴とも言われていたビジュアル面にも現れていて今までの作品ではポップでカラフルな色合いの衣装が多かったのに対し本作に登場する女性達は白を基調に色あせたパステルカラーのドレスを身に纏った姿で現れており、これが抑制の効いたトーンの中で淡々と進んで行く物語と実に見事にマッチしていて実に良かったですし、キルスティン・ダンストやエル・ファニングなどソフィア監督作品の常連女優からアンガー・リー・ライスやニコール・キッドマンなどソフィア監督作品初出演女優まで若手からベテランまで幅広い年齢層の揃えた女優陣から彼女達の心を弄ぶ狡猾な兵士を演じたコリン・ファレルまで出演している俳優陣の演技も素晴らしかったです。物語としては地味な題材かも知れないけれど女同士の欲望や嫉妬が生んだ末の衝撃な結末も含め見応え十分の作品となっています。
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