風の旅人

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめの風の旅人のレビュー・感想・評価

3.5
どこを切り取っても絵になる美しい映像に魅了される。
女の情念、嫉妬を描きながら、昼ドラのようなどろどろした展開にならず、上品さを失わないところに、ソフィア・コッポラ監督の育ちの良さを感じた。
「欲望のめざめ」という下品な邦題は、彼女の作品に相応しくない。
個人的にはマーサ役のニコール・キッドマンの優雅な佇まいが印象に残った。

南北戦争時代のアメリカ、南部の森の中にあるファーンズワース女子学園の生徒エミリー(エマ・ハワード)は、キノコ狩りの途中で、足に重傷を負った北軍の兵士マクバニー(コリン・ファレル)と遭遇し連れ帰る。
女だけの園に突如現れた男に色めき立つ女たち。

白を基調としたドレスを身に纏う女たちの集団に、一点の染みのように「異物」としての男が紛れ込む。
結末だけを見れば、男は被害者のように映るが、女を狂わせたのは男の方だ。
男はプレイボーイで、誰彼構わず色目を使い、彼女たちの隠された欲望を刺激した。

物語内容と表現形式が合っていない作品。
この欲望渦巻く世界を表現するには、ソフィア・コッポラ監督のスタイルはお洒落で美し過ぎる。
風の旅人

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