たく

最後の追跡のたくのレビュー・感想・評価

最後の追跡(2016年製作の映画)
3.8
地味に良かった。テキサスで銀行強盗を繰り返す兄弟とそれを追う定年直前のテキサス・レンジャーの話で、兄弟愛に泣けた。

銀行強盗は粗暴な兄のタナーの計画じゃなくて弟のロイが兄に持ち掛けた話というのが意外。石油採掘で利益を得てるのになんで銀行強盗をするのかよく分からなかったんだけど、途中でアルベルトが話すテキサスの土地の歩みの因果から察するに、過去にロイの家族が銀行に苦しめられたことによる恨みがあったんだろうね。
ジェフ・ブリッジス演ずるマーカスのとぼけた雰囲気ながら鋭い推理を働かせていくのが「ファーゴ」を連想させる。相棒のアルベルトに対してマーカスが執拗にからかい続けるのが実は深い愛情表現になってて、タナーとロイとの兄弟愛と並行的に描かれるのがラストに繋がる。

銀行強盗を繰り返す二人が俯瞰で見ると極悪な犯罪人なんだけど、二人だけのプライベート空間ではごく普通の仲の良い兄弟で、沈んだ夕陽をバックにじゃれあうところが特に印象的。いかにも頭が悪そうで狂人にさえ見える粗暴なタナーがカーチェイスや銃撃戦の場面で見事な危機回避策を発揮するところは、彼に備わる本能的な強い生存能力を感じさせた。終盤、ロイの逃亡の時間稼ぎのために自ら囮になって警察との激しい銃撃戦に持ち込むところが泣ける。
そしてこのまま真相が分からぬまま終わるのかと思わせたところからの、何とも言えない苦い幕切れに余韻が残る。
たく

たく