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ブレードランナー 2049のharukaのネタバレレビュー・内容・結末

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

何者にもなれず、何者でもないと突きつけられた現実のそばで逝ってしまうKが哀しすぎた。彼の上にしとしと降る雪が形を残さず溶けていくのと同じように消えてしまうラストは、前作で雨に打たれながら命の灯火を静かに消すロイ・バッティのようでもあり。
ささやかでいいからひとりだけでいいから、誰かにとっての「特別」になりたかっただけなのに、その小さな唯一を追い求めるうちにアイデンティティを喪失していくレプリカントが全員哀しかった「最上の天使」で在ることに取り憑かれたラヴも、縋った希望が次々と指の隙間から抜け落ちていくKも。それを手に入れたデッカードや一部のネクサス8型たちが幸福だったとは決して言えないけれどそれでもネクサス9型はただのひとりにも救いがないように思えた

感情のひとつも表に出さないKが、心の安寧と己のアイデンティティを保つため拠り所にしていたジョイが目の前で破壊され、そうして次に会った彼女は姿形だけが同じの量産物でしかなく、そんなのは当たり前のことだと理解していたはずなのに自分がこれほどまでに彼女に依存をしていたこと、そしてその拠り所がいかに空虚なものであったのかを突きつけられたのがあの美しい大型3D広告のワンシーンだったのかと思うと、絶望の淵で憤りに震えた拳や打ち拉がれて垂れた頭よりも、微動だにせず彼女を見詰めるだけのKが切なくって哀しくってたまらなくなった。

廃墟の入り口に掲げられた행운、幸運って意味だけれどそりゃあベガスだし。けれど自分が特別な存在であるかもしれないと一縷の希望を抱いて「幸運」へと足を踏み入れるKの構図、あとから絶望へ突き落とされることを思えばそれなんて皮肉なの…

あとは圧倒的で芸術とさえ思える映像美、それからハンス・ジマーの創る音楽が例に漏れず心底好きでした。哀しみの余韻が切ないけれど心地良い。何度でも観たい。
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