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ブレードランナー 2049のgurikomonakaのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.1
※そこそこネタバレあるので、鑑賞後見てね!

愛の境界線

いや~すごい!
一作目のさりげない設定(レイチェルは特別製のレプリカント)をこのように広げることで、「愛」という物の不確かさに切り込んでくるなんて想像だにしていなかった
でも考えてみると、前作の恐らくメインテーマである「人間性のありか」と言うものは少なからず愛という要素が絡んできているし(前作でもデッカードとレイチェルでそれを示唆していたし)、それをフィーチャーするのは極めて自然だよなあとも感じられる

それにしても本作の愛についての思考実験はすごく精神に来る内容だったw
これについてはスパイク・ジョーンズ監督のherでも深く切り込まれていたけど、本作の疑似彼女は声だけではなく姿さえもリアリティを伴っている存在なのが憎い
こんなんいくらイケメンライアン・ゴズリングでもそりゃ恋しちゃうよ・・・
そしてこの恋愛があくまで疑似でしかないのかと揺れるライアン・ゴズリングの悲しさといったら・・・自分が何者であるかすらわからないのに愛する人ですら疑似にしか過ぎないのではないかっていうね・・・

また、本作が凄まじいのはその「疑似」ということそのものに疑問を唱える姿勢だ
人間もまた上位の神という存在に創られすべての運命が事前に決められているのだとしたら、人間そのものの「愛」や「人間性」すら怪しいものになり本質的にはレプリカントと同じではないのか?
宗教を信じる人間にとってこれほど答えに詰まる質問はないだろう

いやーほんとにこういうアンドロイドが現実に現れたらどうなっちゃうんだろうなあ
でも自分はやっぱり人間らしいアンドロイドや、人間よりも人間らしいアンドロイドはもはや人間ではいいんじゃないかなぁと思う
本作でそれを久しぶりに再確認できて良かった

ということでテーマ性や音楽(ヨハン・ヨハンソンじゃなかったのがちょっと残念だけどハンス・ジマーもやっぱり良い)には大満足だったが、尺の長さは大いに不満だったw
163分は流石に長い!140分くらいには物語を大きく変えずにできたと思うのに・・・
序盤は背景の美しさに見とれていて余り気にならなかったが、流石に中盤以降は1カット1カットの長さに辟易してしまったw
メッセージはその点長回しとテンポの良さを両立出来ていたと思っているのでそういう面ではメッセージのほうが好きかなぁ

そういえばメッセージも「運命」が確定していることを知りながらも自分の人生を肯定する話だったなあ
ヴィルヌーヴ監督はそういう決められた定めがあったとして、その上でどう生きていくかについて考えるのが好きなのかもしれない
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