モッチー

ブレードランナー 2049のモッチーのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
3.5
 劇場公開時、期待と興奮をもって観ましたが、時間をおいて冷静かつ客観的に評すると、駄作ですねぇ。
 まず、脚本や設定に変に凝りすぎ。前作のタイレル社社長は単に企業人として改革を進めた結果が、倫理的には正しいとは言えなかったよね、というだけで、基本的に普通の人なんですね。他の登場人物にしても然り、悪党ではないのです。各々が各々の立場のためにただ行動している、その結果として戦闘アクションが生じてしまう、アクションにちゃんと必然性がありました。荒唐無稽な物語にしっかりリアリティを与え、大人の物語として非常に上手く成立させていたと思います。
 しかし、「2049」は、壮大な野望を持つ盲目のウォレス社社長一派の陰謀とライアン・ゴズリング演じるブレードランナーとの戦い、という感じになってしまっていて、どうしてもアルアルな話に感じてしまいます。。戦闘アクションにしてもアクションを入れる為のアクション、という感じで強い必然性が感じられません。(この辺り低年齢層も獲得するための業界事情?)
 加えて細部の設定にしても、レプリカントに生殖能力があったり、貧困層のゲットーがあったり、反政府的な地下組織があったり、これまたありがちなお子様向けSF。演出面でもあげたらきりが無いのですが、ウォレス社長の部屋が仰々しいダークな感じだったり、生まれたばかりのレプリカントを殺してみたり、演出過剰。全体においていかにもなハリウッド的作りの映画です。
 私は、SFや冒険活劇・戦闘ヒーロー・ホラー等のジャンルにおいて大切な事は、荒唐無稽な話をいかにもっともらしい理由を与えて臨場感をもたせるか、それが腕の見せ所、と考えていますので、そうした面で大人が楽しめる映画としては弱いと感じざるを得ません。
 マイナス評価ばかり述べているようになってしまいましたが、グラフィックは素晴らしく、一つのヴィジュアルアートとしては完成されていると思います。
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