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ありがとう、トニ・エルドマンの8のネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

【試写会】
ユーモアは勇気と愛無しには成立しない。
ドイツ人のジョーク・ユーモアセンスのなさは、しばしばネタにされるほどであるが、ドイツ人女性監督によるこの作品はそうした揶揄に対して見事な反論をかましたように思える。

どこかジャック・ニコルソンを彷彿とさせる親父ヴィンフリートは一般的な感覚で言えば、常に”スベって”いるが、そのしつこく奇妙な人生のコーチングは、人がシリアスになり過ぎるあまり見落としがちなユーモアの存在を浮かび上がらせる。そして実はそれこそが、不寛容と排除の社会・グローバリゼーションによる搾取構造に対する希望的な反抗であり、人が困難を乗り越える術となる。ユーモアは人の為ならず、だ。

ちなみに最後に娘のイネスが転職先にマッキンゼーを選ぶあたりに、「だからといってこじんまりとしてたまるかい」というプライドを感じ、一筋縄ではいかないなと感じた。
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