(2025.25)
多忙なセレブに代わりアクセサリーや衣服を買って納める“パーソナルショッパー”としてパリで働くモーリーンは、最近亡くなった兄と共に霊媒師としての活動をするという一面もあった。兄が幽霊として再び現れてくれるのではないかと期待し、彼の住んでいた屋敷に留まるモーリーンだったが、なかなか痕跡が現れることがなく……というお話。
“パーソナルショッパー ”という職業の概要についてだけはざっくり把握していたのでそういう話なのかと思っていたら、急に霊媒師がどうこうという話が出てきてビックリ。弟の死を受け入れきれず霊に会おうと試みるパートと、セレブのための買い物で各地を飛び回る中で、謎の人間から脅迫めいたスマホのメッセージが届くというパートの二つの軸で進んでいくんだけど、オカルト、ホラー、サスペンス、スリラーとジャンル間をクネクネと行ったり来たりする先の読めなさがスリリングで良かった。オカルトは何かの比喩なのかな、と思ってたらガッツリ幽霊が出てきたり、どう転ぶか最後までわからない。
アンニュイで繊細な空気を湛えたクリステン・スチュワートは、曖昧で所在無さげな映画の雰囲気にピッタリのハマり役で、その魅力を存分に発揮していたと思う。
雰囲気はとても良いんだけど、映画の大部分がスマホのメッセージで進行するというのがなんか映画的な動きに乏しく感じてしまった。現代的なスリラーらしくはあるが、らしいと言うだけで面白くはなかったかな。
上記のこともそうだし、ホラー的要素なんかもあくまで舞台装置としてのものでしかなくて、そこまで真剣に取り扱おうとはしていない熱量の低さが自分には合わなかったかも。特に、それまでは移さないことで不気味さを演出していたはずが、唐突に合成(CG?)で現れる幽霊描写のチープさはにちょっと冷めてしまう。ジャンルレスな展開も最初は楽しいんだけど、ずっと定まらないままだと最終的には散漫な印象で終わってしまったので、何か途中で一本軸となるテーマみたいなものが見えてきたら自分好みだったかなと思った。