めしいらず

午後8時の訪問者のめしいらずのレビュー・感想・評価

午後8時の訪問者(2016年製作の映画)
3.3
午後8時。時間外に診療所のブザーを鳴らす音。でも主人公は応じなかった。翌日にその時の訪問者が死体で発見されたことを知る。もしあの時にドアを開けていれば…。彼女は良心の呵責に苛まれる。それは事情を知らなかったとは言え救えた筈の命を救わなかった後悔は勿論、穏やかならざるその時の心中が判断に影響し正しくない方へ己を導いたからだろう。彼女は事件にのめり込んでいく。その中で会うそれぞれに都合の悪い事情を抱えた人々は彼女の行動を疎んじる。主人公も含めて疚しさと無縁な人はそれほどいない。それが生きて行く実情だ。「もしもあの時」と思う場面は人生で幾度となく遭遇する。間違えたのなら自ら正さなければならない。彼女が知った事件の真相。そのことで誰が救われるわけではないけれど、逃げずに受け止められればもう過ちを繰り返さずに済むだろう。老婆に手を添え歩調を合わせてゆっくりと診察室へ歩いていくラストシーンの優しい余韻。
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