沙那王

わたしは、ダニエル・ブレイクの沙那王のネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

ダニエルが私の父に似て頑固で坊主だった。

『Do you understand?』
公的機関の冷酷さが際立つ。全てがシステム通りで一切の例外をも認めない。助けを求める声を聞かない。
『助けが必要なら言ってくれ。』
そう声をかけてくる人は何もしてくれない。
対してダニエルは、『Can I help you?』なんて言う前に手を差し伸べてる。

『医者から就業を止められていても就職活動は続けて。でないと給付金が出ないのよ。根が良くて正直な人たちがホームレスになっていくのを見てきたの。』
『ありがとう。でも尊厳を失ったら終わりだ。』

ダニエルと知り合ったシングルマザーの置かれた状況も深刻。
市井の人々が細々と支え合うには限界がある。
それでも、デイジーちゃんが言う。
『前、助けてくれた?』『なら、助けさせて。』
その小さなハグには、最大級の愛が詰まってる。

『人生には追い風が必要だろ?』
無骨な大工、ダニエル・ブレイク。
彼は確かに生きた。
『きちんと税金を払ってきた。隣人には手を貸す。施しは受けない。』
鉛筆書きのメモ、窓のプチプチ、魚のモビール、角が丸い本棚、蝶番の壊れた道具箱。
全てに愛が詰まってる。

追記。シングルマザーの飢えに震えた。生理用品も生活必需品。成長する子供のための靴。対して寝室税って何さ!英国の話だから。ではなく、これは日本の話でもある。指定難病ではない重篤な病の友人は生活保護で何とか生きてるけど、人らしい生活もできずに通院も限られてる。助けを求めてるのが少数だから切り捨てるのではなく、まずは聞いてほしい、生きる事を遠慮しなければならないほどに追いやられて声を上げられなくなった人たちの声を。
沙那王

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