花俟良王

エリザのためにの花俟良王のネタバレレビュー・内容・結末

エリザのために(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

確かにルーマニアの社会情勢抜きには語れない作品ではあるが、パズルを組み立てていく楽しさもあった。

「人の言うことに従って夢見ていたら何も変わらなかった」という社会事情が発端。だからこのおじさんは娘をとにかく自立させ外国に行かせたがっている。不幸な事件で重要な試験がオシャカになりそうな時、おじさんはコネを使いまくり回避しようとする。娘に不正を勧めるが当然納得されない。お父さんもう気が気じゃない。愛人の息子に石を投げられるような自分と同じ道を歩ませたくない。

で、なんだかんだの右往左往と人生の皮肉の末、ラスト、レビューを見るとこれが伝わってなさそうなんだけど、結局、娘はお父さんの心配をよそに、独自の不正をする。「涙が止まらないので時間を延長してもらった」と打ち明ける。その後で「どう?ちゃんとできたでしょ?」とも。

結局、この監督は辛い過去にありながらも未来は信じるべきだと言っているのではないか。人が思っている以上に下の世代はやるときゃやるんだよと。

最後の写真の自信に満ちた笑みはそれを物語るが、同時に全体主義的な不気味さもある。やはり過去は背負わなければいけないのか。

ざっくり書いたけど、会話は勿論、絶えずなる電話、野良犬、公園の親達の会話にまでがメタファーとなっていたと思う。
花俟良王

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