藍住

セールスマンの藍住のレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
4.0
妻がレイプされたことをきっかけにどんどん人間性を失っていく夫の姿が辛い。
でもそんな夫も無意識に妻に酷いことを平気で言う。
傷ついた妻が泣き寝入りしなくちゃいけない社会も苦しい。
もう色々な感情でグチャグチャだった。
緻密な脚本と演技が120%の力を発揮していた。

レイプした犯人も「そそられたからやった」とか言うのに、具合が悪いから帰してくれとか言うのに対して、犯人を許せない怒りに燃える夫の気持ちも分かる。
自分達の関係はあの事件のせいでとっくに壊れてしまったのに、犯人には家族が居て。
不公平だろう?
おかしいだろう?と怒り狂うのも。
しかしながら、終盤の彼の怒りはもう彼だけのもので、そこには妻の意思も決定権も無かった。
夫の目線と妻の目線はどこまでいっても平行線で交わることがない。
同じ高さで世界を見ることは無い。
やるせない。

イランでレイプされても泣き寝入りすることが多いのには法律に問題があるという重要な指摘があってネットの記事(※)を読んだが、絶句してしまった……。
ここまで男尊女卑が続いてる国の法律を前にして、あの夫婦がやるべきことはなんだったのか。
判断ができない。
苦しい。

この映画を当時映画館で観たらボッコボコにされて席を立てなかっただろうな……。
性的暴行事件を描きながらもそのシーンを見せずに俳優の演技で凄惨さを語る姿勢は本当に信頼できる。
問題が山積み過ぎて答えが出せない。
元気がある時に観てください。

※参照 https://realsound.jp/movie/2018/01/post-147783.html/amp
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