この映画については、監督と女優がアカデミー賞の授賞式をボイコットしたという程度の情報しか知らない状態で観に行って、「映画とトランプは関係ないだろうに勝手なことするなあ」と思っていたのだけど、映画を観ると何故そういうこをしたかとても納得できた。
この映画は、観ている側が善だと思っていた考え方は一面的な見方でしかなかったり、正しいことや許されることだと思っていたことが実は許されないことだったり、取り返しのつかないことをしてしまったと思っていたのに感謝されてしまったりと、とにかく物事には色々な側面があって色々な立場があるということを突きつけてくる。
このように世の中は勧善懲悪だけではない、ということを重厚に伝える作品を作った人や演じた人からすると、トランプのように画一的な敵を作るやり方は受け入れられなかったんだろうなあと、良くも悪くも感じた。
緊迫感や不穏な空気を伝える演出がとても見事だと思ったが、それ以上に映画という評価を超えて色々なことに思いを馳せてしまうとても心に残る作品だった。
