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IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のtagomagoのレビュー・感想・評価

4.5
排水溝からペニーワイズが現れる冒頭のつかみでこれは面白くなるなと思いました。喋り方が変で口角の上がり方も人間のそれじゃなくて気味が悪い。よだれ。それでいて容赦がない。
動きが予測不可能、スクッと立ち上がったら長身、こいつを見てるだけでも面白いなと思います。
シャマラン監督の「ヴィジット」に出てくるあのおばあちゃん以来かな。こんなに頑張って子供たちの思い出作りに勤しんでいる姿を映画の中で見るのは。じわじわいたぶりつつ子供の成長を促し最期にはその成長ぶりを見届ける。さっさと殺ればいいのにとかそんな無粋なことは言いません。恐怖を最大限引き出した状態のときが一番美味しいんでしょうね。
ただこのホラーアイコンに頼ることなくジュブナイルものとしてとても良い映画に仕上げてくれたので驚きです。

僕はあの少年少女の誰かだったような気がするなんて思ったりして負け犬たちが力を合わせて恐怖に立ち向かう話だから余計に力が入りました。大人は誰も助けてくれない状況の中で彼らの友情が眩しくてね。肩を寄せ合う場面で泣いてしまいました。颯爽と自転車で駆け抜ける姿を見るだけで青春を感じるというね。確かにあのピエロは怖いけどあの場所に自分もいたかったなんて夢想してしまうわけですよ。少年少女たちのトラウマを丁寧に描きその恐怖に立ち向かわせる構成はお手本のように上手いです。

採算を気にした近年の低予算なホラー映画とは違い、真っ当に娯楽ホラー映画として勝負を仕掛けた度胸には嬉しくなる。
映写機のシーンでの恐怖表現から逃げない姿勢は素晴らしかったです。とことん驚かしてやる精神に溢れたスタッフのガッツ!
画面の隅々まで力を入れたと思わせる80年代を再現した美術は唸るところ。お金をかけなければ出来ないところだと思います。

不満もないことはない。例えばあの事件にもペニーワイズが関わっていたのかという土着的な不気味さはもっと感じたかったし、ペニーワイズを倒す方法として”集団”以上の何かがほしかった。というのは無い物ねだりですかね。

そう言えば劇場には高校生が多く来てて私語が心配でしたが過剰に怖がることもなく適度に怖がってくれて安心しました。良かったです。
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