いずぼぺ

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーのいずぼぺのレビュー・感想・評価

3.8
みんなホールデンに自分の姿をみる。

生きることは苦しい。「生きにくさ」の物語に人は共感する。生きにくさは誰にでもあるのに、それを全身で表現したり、強く感じたり全力で抗うともっと苦しくなる。だから生きにくさを言語化してくれた物語に引きつけられるのではないだろうか。そんな物語の代名詞ともいえる「ライ麦畑でつかまえて」の作者JDサリンジャーの半生を描く。

学生時代にサリンジャーはよく読んだ。本作のおかげで久しぶりに読み直している。10代で感じたこと、考えていたこと、考えもしなかったことがよみがえったりわきあがったり。青臭いと片付けることもできると思ったり、生きにくさをごまかして自分を偽って生きているのではと今の自分を恥じたり。
生きることが苦しいのではなく、生きていることを実感するためにもがくことが苦しさの原因なのではないかとも思う。苦しさも生きている証なのか。
なーんて毎日考えているわけでもないのだが、いろんな感情や考えが様々に色彩を放ち万華鏡のように人生を彩っていくからこそ美しいのだと現時点では思っている。
青春の想い出の一冊から蘇ったサリンジャーは錆び付いた感性を少しだけ呼び起こしてくれている。

ニコラスホルトのサリンジャーは、私のイメージどおりでした。
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