このドキュメンタリーと映画「フォックスキャッチャー」を合わせて観ることで、大富豪ジョン・デュポンの起こした射殺事件の本質がわかってくるような気がする。映画では人間関係などがかなり脚色されているが、こちらのドキュメンタリーは、比較的、忠実にレスリングのチームである「フォックスキャッチャー」の内実に迫っている。映画ではひとつのコントラストとして語られていたデイブとマークのシュルツ兄弟だが、実際は、どうもチームに在籍していた時代に重なりがないため、あの映画のような確執はなかったようである。そのためか、このドキュメンタリーには弟のマークは一切登場しない。
大富豪の射殺事件の原因を、映画とは異なる角度から検証している。チーム内のパワーバランスであったり、ジョン・デュポンと殺されたデイブ・シュルツの関係であったり、あとはデュポン本人の個人的資質についても深く掘り下げている。みどころは、当時の「チーム・フォックス」のプラベートビデオなどがたくさん登場する点だ。オリンピックでの金メダル獲得を目指して日々練習に励むチームのなかに何が起こったのか、人間関係の深部にまで踏み込んで描いている。とにかく、少しでもあの事件に関心があるのなら、映画とともにこちらも観賞することをお勧めする。クオリティ高いNetflixのオリジナル作品だ。
