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アルジェの戦いのdesperadoiのレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
4.5
手持ちカメラを多用したドキュメンタリータッチの映像が生み出す臨場感が凄まじい。特にデモや蜂起のシーンは、作り物だとはとても信じられない迫力に圧倒される。ポール・グリーングラスは映画監督を目指したきっかけとしてこの作品を挙げていたが、それも納得の出来。

映画は抵抗組織とフランス軍及び警察の闘争が双方の視点から描かれる。ただ、実際に抵抗運動に参加したヤセフ・サーディの原作が脚本のベースになっている事もあり、監督のジッロ・ポンテコルヴォが組織側に肩入れしていることは明らかだ。だがその偏りが作品に悪影響を与えているとは思えない。むしろ注目したいのは、こうした戦いの中では性別や年齢に関係なく罪のない人々も巻き込まれるという事実を描く冷徹な視点だ。単に独立運動を手放しで称揚したり、フランス官憲の非道を糾弾することが映画の目的ではないことは、例えば2つの爆破のシーンの後に用いられる同じ音楽にも表れているように思う。死者を悼むような静かなメロディーは、立場に関係なく犠牲者を等しく扱っているように感じた。どっちもどっちといった態度ともまた異なるバランスを保つのは困難だろうが、この作品が傑作として語り継がれる理由の一つだろう。
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