デニロ

アンダーワールド・ストーリーのデニロのレビュー・感想・評価

3.5
1950年製作。脚本ヘンリー・ブランクフォート、サイ・エンドフィールド。監督サイ・エンドフィールド。シネマヴェーラ渋谷のチラシには、/すっぱ抜き記事が元で検事が殺され、警察・司法からも業界からも追放された新聞記者ダン・デュリエは、田舎新聞の株を買う資金をマフィアのボスにたかりに行くが…。小悪党でお馴染みデュリエが、柄にもなく罪を着せられた黒人メイドに肩入れし“良心的大メディア”に一発食らわせる!徹底したリアリズム描写で独自の地位を築いたサイ・エンドフィールドの傑作。/なんて書かれているけれど。

この時代に撮影された犯罪映画らしくシャープな映像、スリリングな展開、端折ったストーリーで強引に纏めています。

主人公ダン・デュリエという男がよく分からない。自分の書いたオフレコ記事が原因でギャングを起訴しようとしていた検事が射殺されてしまう。こんな奴は新聞記者じゃないと検事局からの抗議で新聞社を馘首。そんなことだから再就職もままならぬ。新聞社経営のパートナー広告を見せられて読んでみると、資金として7,500ドル必要だ。で、何の躊躇もなく先の犯罪者ハワード・ダ・シルバの許に行き、俺の記事のおかげで救われてるんだろと金をせびり、亡き父の新聞社を引き継いだ娘ゲイル・ストームを訪ねて、まあいい加減な経歴を並べ立ててパートナーに収まる。地元新聞社のオーナー家で殺人事件が起こると、これは金になると飛びつき、取材した情報を他の新聞社に売り込もうとしたり、何をかんがえているのやら。

この作品にはもう一人スポットライトを浴びる人物がいて、それが殺人事件のあった新聞社のオーナー/ハーバート・マーシャル。殺されたのは息子の嫁ということで悲しみに暮れていたのですが、息子曰く、殺したのは俺だ、父さんや妻にろくでなし扱いされたし、妻は自分より父さんの方が好きだったんだ、ふたりは何かあったんだろ!ということらしい。そんなバカ息子をどうしたらいいのかと、今度は狼狽える。

殺人の容疑者になったのが殺された女のメイド/メアリー・アンダーソン。黒人という設定なのだけど全くそうは見えない。だって白人女優なんだもの。どういうつもりなんでしょうか。人種問題をさらりと入れたかったのでしょうか。ダン・デュリエは新聞社オーナーの出した25,000ドルの懸賞金に目が眩んだのか、メアリー・アンダーソンを検察に売り飛ばします。でも、賞金は有罪になってからね、との言葉にがっかりしていると、検事から、次は母親でも売れよ、ときつい一発。真犯人を知っている観客には、この黒人女性がどのようにして救われるんだというサスペンスが与えられる。

メアリ・アンダーソン救済委員会の興奮と鎮静、自分ファーストのコウモリ男ダン・デュリエ排斥、悩める父親ハーバート・マーシャルなんかを描きつつ、犯人なんて黒人でいいじゃないか、救済委員会なんて潰してしまえ、邪魔者/ダン・デュリエは消せ、というようなことが小さなサロンで決定されていることは今にも通じる権力者の作法でしょうか。

ラストで、ボコボコにされて救急車に乗せられるダン・デュリエ。何故に邪な彼にこころを寄せ始めたのか全く分からない新聞社のパートナー/ゲイル・ストームに検事が、救急車に乗ったことはあるか、今がそのチャンスだよ、と言ってお茶を濁すところがアメリカ映画らしい。

シネマヴェーラ渋谷 Film Gris 赤狩り時代のフィルム・ノワール にて
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