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手紙は憶えているのchakoのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
3.9
単なるミステリーではなく、その背景にあるのがもっと深く、ホロコーストを扱っているということもあり、非常に見応えのある作品でした。

法で裁けないのなら、自分たちの手で裁きを下すしかない。ナチス・ドイツによって彼らが奪われたもの、受けた痛みは計り知れない。
その憎しみから突き動かされるように90歳で認知症でありながらも、主人公はナチスの残党を追う旅に出る。

ホロコーストを扱った作品にしては珍しく、舞台が戦時中というわけでも回想という形で描かれるわけでもなく、主人公ゼヴが出会う者たちによって語られ、その言葉の一つ一つが胸に突き刺さりました。

そして何より主人公ゼヴを演じる名優クリストファー・プラマーの演技が素晴らしい。
荒い息遣い、額に噴き出す汗、たどたどしい歩き方、拳銃を手にした時の震える手、美しいピアノの音色・・・

腕に刻まれた番号の重みがずしりと響く衝撃のラストシーン

どれだけ時が流れても、かつての面影もない程に年老いて姿は変わってしまっても、声を聞けば一瞬で記憶は蘇る・・・
憎しみが消え去ることはない

ぜひ前情報は入れずに観てほしい作品です。
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