このレビューはネタバレを含みます
ことごとく不在のキリストがその存在だけで人の世を混乱させ、救いを求むる心が悪を産む。異質な存在感を放つ國村隼が扮する寡黙だが狡猾な悪魔と驚くほどに説得力に欠ける女性キリスト。不条理だが理路整然とした現実が人心の脆弱さ、猜疑心によって隠され、人の手が"悪"を煮立てていく。劇中では行動を起こすのも男、その場をめちゃくちゃにするのも男で、最後の最後に至っては「お父さんは警察官。お父さんが解決してやる」と息巻く。
家父長制に於ける「非力な女性」をキリストに当て嵌めることにより
「あたし達とお前たちの大好きなキリストって変わらんくね?ん?」
という痛いほど的を得たメッセージに仕立て上げる。
國村隼が女性を追うシーンを観るに、彼もまたキリストに惑わされた後天的な悪なのかもしれない。
キリスト教と人の手によって煮立てられた"悪"の境界線を曖昧にした作品。
だと思いまーす。