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哭声 コクソンのKEYのレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
4.3
ホラー?オカルト?スリラー?サスペンス?ええい、全部まとめちゃえ!

話題の韓国映画『哭声/コクソン』が宮崎にやっっと上陸‼︎5/26日まで上映だった所を、ギリギリ滑り込みセーフで観賞♪あ、今日は時間に余裕を持って一時間前には映画館に付いていたので、見逃したシーンは無いはずです‼︎‼︎

さて、今作はナ・ホンジン監督の長編映画三作目。青龍映画賞で、日本人俳優の國村隼さんが外国人初の男優助演賞受賞、人気スター賞の二冠を制したです。観る前から期待を煽る様な功績ですが、今作はその受賞の名に恥じない大傑作でした‼︎‼︎
國村隼は多くの映画に出演する有名な俳優さんなのですが、正直名前と顔を知ってる程度でした。でも、やるじゃん國村隼さん!
この映画で強烈なインパクトを残してくれたので、「國村隼さん」と聞けば、すぐに「あ〜、あの『コクソン』って映画の‼︎森の中を四つん這いになって走り回ってたあの國村隼さんね!」って答えることができます。やったね!

ネタバレ(笑)はこれくらいにして…今作のあらすじを解説。
舞台となる哭声と言う小さな村で、連続殺人事件が起こります。そのどれもが、自らの家族に対する犯行で、加害者には特徴的な皮膚の爛れが見られるようです。分析すると毒キノコが原因だとか。そんな中、主人公の警察官ジョングは村で「連続殺人事件の犯人は日本人だ」「あの日本人は悪魔だ」と言う噂を耳にします。最初は冗談半分に聞いていたジョングですが、犯行の目撃者や事件の共通点を見るうちに、噂を信じ始めます。しかしある日、今度は自分の娘もおかしくなり、警察としてでは無く、自分の娘を助けるために事件にのめり込み、物語は更に加速していくのでした…

今作は脚本執筆と改稿に2年8ヶ月、撮影に6ヶ月、ポストプロダクションに1年間かけて作られた(パンフレット参照)らしいのですが、脚本と映像の両方ともかなり精度の高いものでした。
最近韓国映画を観ていて思うのですが、シリアスなシーンに笑いを持ってくる演出が上手い。『お嬢さん』の拷問シーンも然り、今作の前半では「謎の日本人(映画では名前が登場しません)」が血まみれで赤い目をして登場するシーンですらコミカルに描かれているのです。しかし、主人公のジョングが日本人の話を冗談半分に聞いていた様に、笑えるのは最初だけで、ラストにかけて徐々にリアリティが増し、怖くなってくるのです。

ジョングは、娘を助けるために犯人を追います。物語は進み「祈祷師」と呼ばれる人物が登場します。
皆さんは「祈祷師」って知ってますか?パンフレットでは「シャーマン」と訳されて居ますが、そちらの方がわかりにくいです。「祈祷師」は映画を観る限り「悪霊祓いする人」と言う認識で合っている様です。しかし「祈祷師」や「悪魔祓い」などオカルト的名前を聞いてい、嫌悪感を持たないものでしょうか?
韓国の小さな村に来た日本人に対し抱く感情と同じで、〝身近ではない知らない何か〟に対して、人は自然と恐怖心を抱くもので、それは〝偏見〟や〝差別〟的な意識とは全く異なります。
この物語で主人公は、「祈祷師」に救いを求めるのですが、それは「娘を救いたい」と言う純粋な思いからでした。

國村隼が演じる謎の日本人が「私が何者か、私の口でいくら言ったところで、お前の考えはわからない。」と言うシーンが2回ほど(セリフは違うが、同じ様なニュアンスで)あります。
今作は主人公が祈祷師を信じ、日本人を悪魔と見る一方で、他者は別の誰かを信じ、別の誰かを悪魔と見ているなど、同時に複数の視点を描いています。またその中でカトリック教の助祭も登場することから、これは宗教にも通づる観点なんだと感じました。
世界にたくさんの宗教がある中で、最終的に何を信じるかは自分自身が決めることです。しかし時には騙されたり、上手くいかなかったり、失敗することだってあります。
この物語のメディアでは最後まで「毒キノコが原因」と報道されてきました。その記事を見た人が全員信じるわけではありません。信じる人は信じ、疑う人は最後まで疑うでしょう。
人は結局、自分の信じたいものを信じ、疑います。だから例えその物語の結末が悪くても、「仕方ない」と思うしかないのです。
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