幽斎

クライム・オブ・マネー-完全犯罪-の幽斎のレビュー・感想・評価

4.0
Filmarksに情報が無いのでイントロダクション。
病気の母親と暮らす主人公ポールKevin Zegersは、リーマン・ショックの影響で就職が決まらず、母親の薬も買えない生活苦、財産差し押さえのピンチに陥る。其処で逮捕歴の有る大学生を誘い、富豪の子供を誘拐する計画を企てる。別荘で休暇を過ごす予定の3人を誘拐するが、事態は思わぬ展開を迎える・・・。

「誘拐」は一見効率が良いが問題点も多い。1つは「警察に言えば娘の命は無い」ドラマの世界で現実には100%警察が取り仕切る。身代金の交渉は今はSNSなどデジタル化される一方で、デジタルほど履歴や追跡が可能なアイテムも無い。人質は犯人を見ていたり、何処に潜伏していたか等、少なからず証拠を握る存在であり、それを解放するリスクは尽きない。一番問題なのは身代金の受け渡し、颯爽とオンラインで入金するシーンを見るが、誰もがケイマン諸島に口座を持ってる訳では無い(笑)。つまり効率的にも実効性の乏しい犯罪で、強盗が遥かに御手軽(お薦めはしません)。

誘拐→身代金の交渉→現金の受け渡し→人質の解放のプロセスは非常に映画的で、起承転「結」をどう導き出すか、サスペンス要素も強く今まで多くの作品が作られた。プロットをトレースするだけでは過去作と比較されるだけで、一定水準の個性が求められる。邦題の「完全犯罪」は眉唾だが、少しだけ面白い展開は用意されてる。

主人公はサイコパスでも無く、ごく一般的な青年で家族想い。仲間のチョイスに難ありと思わせ、それもトリックの内と思ったら別方向に物語が転がる等、工夫を感じる演出が続く。後半からオチに繋げるまでに減速する点が残念ですが、Aaron Woodley監督は実写の監督歴が少なく、主にアニメ監督でしかも評価が低いので本作は健闘してる部類。富豪の父親の描き方が面白く、誘拐された側の設定とストーリーが膨らんでるのは、悪くないスクリプト。

主演のKevin Zegersは「ドーン・オブ・ザ・デッド」に出演歴が有り、本作でも存在感が有り、もっと売れても、と思わせるモノが有った。イケメン好きの女子の方は、要チェック。父親の1人Victor Garberは「タイタニック」で観た覚えが。他にも「サバイバル・オブ・ザ・デッド」Devon Bostickと「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」Tatiana Maslanyのゾンビ繋がり。そして大物Ray Liotta、何で表記が無いのか不思議、予告編にもガッツリ登場し、ポスターも準主役扱いなのに。

意外な協力者も登場する、掘り出しモノのクライム・サスペンス(スリラーでは無い)。過度な期待は禁物だが、尺も短いので暇潰しにサクッと楽しめる2時間ドラマと思えば、普通に面白い。

「人生一度なら反則は許される」犯人の計画は成功したのか?よく見れば貴方にも本当の答えが分る筈だ。
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