幽斎

ブギーマンの幽斎のレビュー・感想・評価

ブギーマン(2023年製作の映画)
3.8
恒例のシリーズ時系列
1982年  The Boogeyman オリジナル、短編
2023年 3.8 The Boogeyman 本作、初の長編

ホラーの帝王Stephen King最初期の短編を描いたアーバン・レジェンド・スリラー。和風のイオン京都桂川で鑑賞。

原作はStephen Kingがキャヴァリエ誌の1973年3月号の短編集「Night Shift」の一篇「The Boogeyman」邦題「子取り鬼」。ホラー・ファンなら「ブギーマンって新作だっけ?」思うかも。錯誤の理由は1982年「ハロウィンII」日本で公開された時のタイトルが「ブギーマン」。1980年「The Boogey Man」、2005年Sam Raimi制作「Boogeyman」、2007年「Boogeyman 2」等、邦題なら1980年「死霊の鏡/ブギーマン」、2002年「ザ・ブギーマン Resurrection」、2012年「新・ブギーマン」色々紛らわしい。

同名タイトルが許されるのは「Boogeyman」は民間伝承、悪い子が居ると浚って逝く鬼、と伝わるパブリックドメイン的存在だから。大人が子供を躾ける為のモノで日本で言うなら「なまはげ」(秋田の方合ってます?(笑)。本作は「子取り鬼」初めて長編化、短編が作られて以降、日の目を見る事は無かったがディズニーに強制買収された20世紀フォックスがレビュー済「クワイエット・プレイス」原作者Scott BeckとBryan Woodsに映画化を依頼した事から物語は始まる。

当初は監督も任せる筈がレビュー済「ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷」観たプロデューサー「ストレンジャー・シングス」Shawn Levyが「コリャ、ダメだ」違う監督を探してたらフォックス消滅。ソレをディズニーの子会社Huluが配信用に適当な(悪い意味で)ホラー映画を探した所、本作のプロジェクトを発見。「ブラックスワン」Mark Heymanに脚本をリライト、配信の目玉にしようと思ったら、フォックスの後継会社「20世紀スタジオ」重役が「コレは劇場が似合うだろう」ヒッソリ公開したら「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」抜いて北米初登場3位のスマッシュヒット!。

他のホラー映画「スクリーム6」「死霊のはらわた ライジング」軒並みシネコンから締め出される悲劇に見舞われたが、本作はイオンが後援してくれた事で日本でも公開。Tジョイ京都の有る京都八条口のイオンモール、何時も仕事帰りにお世話に成ってます!(笑)。監督にレビュー済「ズーム/見えない参加者」Rob Savageを抜擢。話題作「DASHCAM ダッシュカム」の監督。フォックス改め20世紀スタジオ、メジャーでは実はホラーが苦手。配信なので、グロゴア描写は薄めでホラーファンには予め警報を出して置きます(笑)。

扶桑社ミステリーStephen King「ナイトシフト 深夜勤務」今でも手元に有る傑作短編集だが、収められた短編10篇、奇想天外なプロットと非日常なシチュエーションが荒唐無稽化しないのが秀逸。「灰色のかたまり」「やつらはときどき帰ってくる」今直ぐに映画化して欲しい逸品。「子取り鬼」レスター・ビリングスの家族の物語でKingの家族観が良く出ており興味深い、改めて読み返すと原作との違いも浮き彫りに。

原作は1973年と言う時代を感じさせる「Toxic masculinity」有害な男らしさをストレートに描き「自分の子供の死因はブギーマン」責任の擦り付けが伺える。原因は読み進めるとDV家庭内暴力と分るが、本来のブギーマンの位置づけの大人が子供を躾ける、ではなく暴力を認めたく無いので「自分の欠点を誤魔化す為」ブギーマンを利用。本来とは真逆のブギーマンと暴力的な父親がイコールの恣意的な置き換え。本作は時代性を考慮、ハーパー家を中心に描く事で、原作を読んだ方なら続編に感じると思う。

「Boogeyman」特定の実態は伴わない。アメリカで就労経験のある私の浅知恵ではゴブリン「Bugbear」語源と思うが、アメリカに住む友人はシンプルに恐怖「Bogge」じゃね?と言うが、通説では動物的な爪と鋭い歯を持つ。日本だと「鬼」のイメージ、だから「なまはげ」(笑)。悩ましいのは恐怖のロジックが小難しく、ブギーマンを信じる者と信じない者に割れ、ウィルは「嘘を吐いた側」ブギーマンの怒りを買う。ソーヤーとセイディは嘘を吐かれる側。ブギーマンも真に凶暴なのか、怒らせたから凶暴化したか「鶏が先か、卵が先か」劇場でも暗過ぎてワカランのでどっちでもイイけど(笑)。

【ネタバレ】物語の核心に触れる考察へ移ります。自己責任でご覧下さい【閲覧注意!】

ブギーマンが実体化して物理攻撃で死ぬ、映画的には正解だろうが、アメリカでは賛否が激しく割れ「実態が無い恐怖の象徴だから怖い」私もソレに同調。恐怖の源泉は「居るか居ないか分らないから怖い」日本の幽霊と同じ価値観。人其々にブギーマンのイメーシが有るので、姿を現した時点で陳腐に見える。ラストで炎上して死ぬ意味も解らない。体験した事が本当だったのか?含みを持たせて終わらせた方がエレガントだと思う。

なぜアメリカ人はドアを開けたまま寝るのか?。映画でお馴染みのシーンですが、コレは「何かに襲われた時に素早く逃げる」嘘の様なホントの話。京都に住むアメリカ人に必ず聞かれる「日本人はなぜトイレを閉めるのか?」彼らのルールは閉まってたら誰か入ってる。空いたらドアも開けておく。住宅事情も異なり、アメリカのドアは全て「内開き」不審者が入ろうとしても体重を掛けてドアを閉める事が出来る。日本は基本的に「外開き」日本は外と内を完全に分けるので靴も脱ぐ「玄関」はアメリカには有りません。洋画を見る時、ドアの開け方にもご注目を。

貴方の部屋のドアは「閉めた筈なのに開いてるゾ?」と言う体験は有りませんか?(笑)。
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