幽斎

シルバー 夢の扉の幽斎のレビュー・感想・評価

シルバー 夢の扉(2023年製作の映画)
3.8
【Amazonスタジオ作品シリーズ】英語原題「Silver and the Book of Dreams」ドイツ映画なのに英語(笑)。AmazonPrimeで0円鑑賞。

Hollywoodでも№1の名門MGM Metro-Goldwyn-Mayerを買収したAmazon MGMスタジオ制作。下請けはドイツのConstantin Film。字面に見覚え有ると思うが、ハリウッドに積極的に参加。例えばソニー・ピクチャーズと組んだ「バイオハザード」。レビュー済「クライモリ」「バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」後は「コリーニ事件」渋い社会派も手掛ける大手プロダクション。MGMは配信映画の拠点をロサンゼルスからドイツに移したので、コレから登場する機会も増えるだろう。

ドイツ原題「Silber und das Buch der Träume」シルバーと夢の本。ドイツを代表するヤングアダルト作家Kerstin Gierの代表作にしてベストセラー小説「Silber」ハードカバーの3部作。日本では絶版で前日譜を含めると20.000円以上する、高っか!(笑)。

原作を読んでる友人から薄っすら情報を仕入れて鑑賞したが、真っ先に思うのはドイツらしくない(笑)。お得意の人体損壊とかドイツのグロさは微塵もない。原作がヤングアダルトと言う事、配信映画でレーティングに厳しい規制にも配慮。クオリティは劇場で公開しても遜色なく、本家ドイツ映画よりMGMらしく予算も潤沢なのはVFXで一目瞭然。私の苦手なヤングアダルトでも普通に観れたので、点数は低目だが割と評価してる。

ヤングアダルトでもディズニーのお花畑ではなく、ハリウッドらしくミステリー感も有る。原作と同じく、アナベルが現実世界で行方不明に為る事が禍々しさの始まり。夢で会うアナベルは始めからイヴを利用する目的で引き込むが、直ぐに嘘と分かり、無関係なメンバーの死。悪夢の実現で風向きも変わり、全員が本を破壊して悪夢を終わらせる方向性に向かう。謎解きを含めた気に為る2段オチの結末は、敢えて伏せて置こう。

秀逸なのは原作のレトリックがミステリー小説でお馴染み「Lucid Dreaming」日本語で明晰夢。睡眠中に見る夢の中で、自分で夢で有ると自覚しながら見てる夢を言う。しかも、明晰夢は夢の状況を自分の思い通りに変化させられるのが特徴で、ソレを分かり易くティーンエイジャー向けの、ホラー・テストの、ジュブナイル・スリラーとして描く。

本作は3部作の1冊目を描き、原作とは違う結末を迎えるが、長編のテイストを上手くコンプレッションして、綺麗な落とし処に収めた点は上手いと思う。もう少し「夢の廊下」の説明が巧ければ、ミステリー初心者でも納得する筈。廊下の扉の中の幻想的な雰囲気を超現実的なビジュアルで分かり易く見せるので「インセプションもどき」にも見える。ハリウッドMGMのテイストが勝り、やはり良い意味でドイツらしくない(笑)。

現実の世界と夢の世界の往来をスリリングに描く、エンタメに徹した完成度は悪くない。
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