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ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦のTラモーンのレビュー・感想・評価

4.0
ナチス関連の作品を深掘りしたくなり今日は前からクリップしてたこれを。


第二次世界大戦中期。イギリス政府とチェコスロバキア亡命政府は、ナチスドイツに占領されたプラハへとヨゼフ(キリアン・マーフィ)とヤン(ジェイミー・ドーナン)二名のパラシュート隊員を送り込む。彼らに与えられた任務はチェコ占領下におけるナチス高官ラインハルト・ハイドリヒの暗殺であった。


かなり骨太でスリリングな戦争サスペンス。しかも調べてみると登場人物や暗殺作戦の詳細など、かなり史実に忠実につくられている模様。

「プラハの虐殺者」の異名を持つハイドリヒの統治、ナチスドイツの武力による圧政が非常に生々しく描かれる。

"チェコスロバキアはナチスドイツに抵抗する意思があるかどうか試されている"

ナチス高官の暗殺が何を意味するか。
報復を恐れて踏み出せずにいたチェコの地下反ナチ組織インドラの面々も協力を渋るほどの危険な任務。成功してもヒトラーからの報復は免れない。それでもチェコを母国とするものとして、ナチスに立ち向かう勇気を示した男たちの戦い。

冒頭で当時の実際の映像が流れるんだけど、本当怖いんだよな。無実であろう疑いをかけられた者は口を割るまで拷問され、処刑される。
作戦の中心であるヨゼフとヤンはもちろん、支援する反ナチ組織の面々も同様の危険の中に身を置き戦いに身を投じたのだ。

ハイドリヒの暗殺に成功しても親衛隊から逃げられないのでは、生きてプラハを脱出することはできないのでは。
そんな極限の緊張感の中でヤンが支援者のマリー(シャルロット・ルボン)と婚約を交わしたあとの、ヨゼフとの会話がつらい。

"君は自分に嘘をついてる"
"そのほうが楽だろ。これを切り抜ければ普通の生活に戻れる、そうだろ?"

刻一刻と決行時間が迫る暗殺作戦のシーンはまさに手に汗を握った。

しかし本番は作戦のその後。
犯人を見つけることに躍起になり暴走を始めたナチスの包囲網。莫大な懸賞金が懸けられ金に目が眩むものも。そして見つかりナチスの手に掛かっていく協力者たち。拷問のシーンは目を背けたくなる。

それでも軍人には生きて戦い続ける義務がある。

多勢に無勢。圧倒的な力の前に絶望感を覚えるような最後の戦い。彼ら6時間立て籠って戦い抜いたのだそうだ。
任務と誇りを持って戦い続けたヨゼフに差し伸べられたレンカ(アンナ・ガイスレロヴァー)の手は救いだったのだろうか。

作戦決行後、プラハでは5000人以上の市民がナチスによって虐殺されたという。
しかし彼らの戦い意志が諸外国を動かしたのも事実。

こうして命を懸けて戦う人たちがいなかったら今の世界は違う形だったかもしれないよな。
本当、戦時下の暴走した思想って恐ろしいな。
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