MasaichiYaguchi

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
終戦記念日が近付くと、第二次世界大戦に纏わる洋・邦画が公開されるが、本作は1942年にナチス親衛隊大将ラインハルト・ハイドリヒ暗殺事件の顛末を描いている。
ラインハルト・ハイドリヒはヒトラー、ヒムラーに次ぐナチスNo3と言われ、「ユダヤ人問題の最終的解決」の推進者であり、当時、副総督としてチェコを統治し、反体制派を次々と逮捕して処刑していったことから、「金髪の野獣」「プラハの屠殺者」と恐れられていた。
大英帝国政府とチェコスロバキア駐英亡命政府は、ナチスとハイドリヒの暴走や暴挙を阻止すべく、コードネーム“Anthropoid”(類人猿作戦)という暗殺計画を立てる。
この暗殺に関しては本作以前に、1987年に公開された「死刑執行人もまた死す」や、1976年公開の「暁の七人」で描かれているが、この映画では、暗殺に係わった二人の軍人ヨゼフ・ガブチークとヤン・クビシュを中心に、暗殺作戦が進行していく中での苦悩や葛藤を織り交ぜながら、祖国の為、平和を取り戻す為に一身を賭していく若者たちを描いていく。
国家や民族の為に尽くそうとする志を持つ人を「志士」と呼ぶが、ヨゼフやヤンをはじめとした七人や、危険を承知で彼らに協力したチェコの人々は、正に「志士」だと思う。
そして、天に代わって罰を加えることを「天誅」と言うが、このチェコの「志士」たちは「ナチスの野獣」に「天誅」を下したと言える。
ただ、「天誅」を下し続けた幕末の「志士」たちの末路が悲壮感溢れるものだったように、彼らも似たような結末を迎える。
だが、本作で描かれるラスト30分間にあるものは、観ている者の心を揺さぶらずにはいられない。