KAJI77

浮雲のKAJI77のレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
4.4
篭城系大学生、成瀬巳喜男の世界に触れる─。
東京ブギウギの流れる激動の戦後日本を捉えた傑作、『浮雲』(1955)を鑑賞しました…!

この作品で描かれるのは、「復興と没落の交錯」にあると感じます。先のない灰色の戦争が終わり、モノクロの中に活気を取り戻す日本経済。それに反比例するようにダラダラと落ちぶれた関係を続けてしまう富岡と幸田。心が弱っていた終戦間際には激しく燃えるような恋をし、強く在らなければならない戦後になって疲れ果ててしまう2人の、なんとも言えないやるせなさ…。きっと映画人的な見識からも形式に当てはめ難い、成瀬監督の了簡を肌で感じました。

監督の作品を観るのはこれが初めてでしたが、ちょくちょく触れております通り僕はこの時代の映像がとても好みです。50'sの市場や街の様相をカメラに収めていると言うだけでも非常に価値があると思いますし、まさに和洋折衷とも言える美しき紛雑には目を奪われます。しかし、いつの時代だって男は浅慮で身勝手だし、女は賢くて皮肉っぽいのがこれまた面白い…笑
自分についても顧みなくては…何処か腹の中を読まれたようで焦りますね…汗

学校もまともに行けないような今だからこそ、あまり普段手を出せないような作品に触れてみるというのも如何でしょうか?
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