雑貨屋の取り扱う品物も、それに至るまでのアプローチも雑貨屋の範疇を遥かに超越している。雑貨屋の仕事で依頼を解決してしまう「美味しんぼ」や「バーテンダー」アプローチだった。そして自分はとても好きな手法だ。
記憶が曖昧な客の探し物を色、音、匂い、触感などから探り当てる。
触感は店主のおじさんのソフトなあれだが、ソフトなのが逆に探し物にとても近くて良かったのかな。とってもお上手。LINKが貼られている子供と楽しむ鑑賞ワークショップの視点は面白いが、やっぱり店主とのそれにも触れぬわけにはいかない。
自分だったら、エンドロールの後で客に何が起こるのか聞いてみたい。もし十秒ほど映像を入れられるとしたらどんなものを挿入するか。42才であの記憶を取り戻して、既に顔も分かっていない相手に会うというのも背景がとても深そうだ。そして人それぞれどう表現するのかは違うだろう。
最後はしっかりと最初の布石を回収していて、店の雰囲気などから終始お洒落で穏やかな空気が流れていた。
連作短編でも面白い。色々な探し物がある人が訪ねてくる。店主のおじさんがその人の記憶をたどり、探し物を見つけると共に客が問題を解決するきっかけを与える。
それでもやっぱり一作目は越えられないというオチつきで。
それにしてもこんな雑貨屋があったら記憶の中の何を探してもらうのかな。
忘れている物や忘れかけているものを見つけにいくのはなかなか難しいが、一緒に思い出す作業は楽しいな。
観ているときの脳内BGMは井上陽水だった。