わっしょい

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのわっしょいのレビュー・感想・評価

3.0
神話的で圧倒的な力による、避けられぬ罰。

心臓外科医のスティーブンが、手術ミスで死なせた患者の息子であるマーティンに究極の選択を迫られる。
究極の選択とは、家族全員の死か、家族1人を自らの手で殺すか、どちらかを選ぶこと。
マーティンの予言通りに家族が衰弱していき、ついに選択しなければならない時が訪れる。というストーリー。


マーティンがひたすら不気味で気持ち悪い。

序盤は好青年として振る舞うが、後半になるにつれて復讐という目的を前面に出して行動するようになっていく。
好青年を演じる序盤は勿論だが、後半の自身の目的の為に動くようになって以降も、どこか感情がこもってないように見えて不気味だった。

また、マーティンの予言通りに皆が衰弱していくのも、意味がわからない。
四肢が麻痺し、食欲がなくなり、目から血を流し、死に至る。
あらゆる検査でも原因がわからないこの病は、明らかに人智を逸脱している
マーティンが何者なのか、全く説明がないまま超常的な現象が起こっていくのが不気味。


この物語の元ネタは、アウリスのイピゲネイアというギリシア悲劇らしい。
神アルテミスの大事にしている鹿を殺してしまった男アガメムノンが、娘イピゲネイアを生贄に捧げるという神話になぞらえた物語。
この映画に置き換えると、アガメムノンがスティーブンで、アルテミスがマーティンといえる。
映画内でのマーティンはまさに神の如き存在で、彼の超常的な力にスティーブン家は従うしかないような状態だった。
神話を元にしていると分かると、マーティンが周囲に対してどこか無関心で淡々と接するところも、神らしさの現れのように感じられる。

過去の罪について、神の如き圧倒的な力で罰を与えられる。
現代版の神話のような映画だった。

正直この元ネタを知らないと、この映画についても、?のままになってしまうと思う。

あとは、評判の通り、カメラワークもかなり良かった。
エスカレーターを下った先で突然マイクが倒れるシーンは、特に良かった。
超高度から見下ろす視点が斬新で、まさに神が見下ろしているかのようなアングルだった。
わっしょい

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