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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのRottenMovieのレビュー・感想・評価

5.0
THE KILLING OF A SACRED DEER 奇妙な少年に家族の誰かを犠牲にしなければ全員が不治の病で死ぬと警告された心臓外科医が少年の警告通り子供達が歩けなくなり、次第に自分の過去の大罪が説明のつかない復讐に繋がっていることに気づかされる傑作ドラマ。

脚本を読んだコリンファレルが吐き気を催した今作。
オープニングからあまりにもショックの強い本物の××××を映し出した監督ヨルゴスランティモスの容赦の無さに脱帽した。

不条理な展開と哲学的なテーマで描いた傑作「THE LOBSTER」に続きヨルゴスランティモスの作家性が発揮されている今作はその才能を世界中の観客に知らしめた代表作だ。
今回はギリシャ神話をモチーフにしており父親の大罪を代弁するかのように子供達が突然歩けなくなり、果ては目から血を流す、残酷で恐ろしいことが続く。ミヒャエルハネケのスリラー『FUNNY GAMES』を彷彿とさせるモラルに反した展開も用意されており観客はコリンファレルの狂気に満ちたパフォーマンスに凍りつくはずだ。
家族を惹きつける不思議な人間性と心臓外科医との接点に観客は大きな疑問を抱きながら元凶であるバリーケオーガンの存在に気持ち悪さを感じるはずだ。

アリシアシルヴァーストーンは登場時間が少ないものの主演デビュー作『THE CRUSH』のダリアンを現代に蘇らせたかのように彼女は奇妙で不愉快な演技を見せている。今年42の彼女の新たな才能をヨルゴスランティモスは買ったのであろう。
助演で出演したニコールキッドマンは美しくも官能的なパフォーマンスで観客を魅了し彼女もまたヨルゴスランティモスの世界に迷い込んでいる。

今作は奇妙で不条理な世界観に加え、登場人物達も不気味で恐ろしく内に秘めている狂気が丁寧に表現されておりアクターのパフォーマンスも見所だ。

ヨルゴスランティモスが世に送り出した今作は小品ながら絶大なパワーを秘めており観客が未だ体験したことのない不可思議な世界に入り込んでもらいたい。

超オススメ!