いののん

笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじのいののんのレビュー・感想・評価

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仕事を始めたばかりの頃、若いということ・女であるということは、何の得にもならないと思っていた。なめられるばかりである。窮屈なばかりである。はやく年をとりたい・はやく女と意識されない年齢になりたいと思っていた。年をとれば私はもっと自由になれる・年をとれば私は私を苦しめる悩みから解放され、おおかたの問題は解決するのだ。そう思っていた。なんとまあ、お気楽な。

年を重ねても、結局私は自由にはなれていない。ほんの一瞬、自由だと感じることはあっても、基本、不自由な思いを抱えて生きている。それはきっと、私の中に生きる内なる世間が、私を縛っているからなんだと思う。内なる世間が私を縛り、内なる世間が私に自由にモノを言わせない。自分で自分を縛っている。



むのたけじさんの、映画のなかでのお話を聞いて、戦争が起きたら、もっともっともっと自己規制が進むのだと思った。自分で自分をもっと縛る。組織は組織でもっと自主規制をする。それが戦争に向かっていくことの怖さなんだと思った。要はそのことを自覚して生きるのか否か。


斎藤隆夫の映像(音声)を目にすることができたのも良かった。日本史で教わった斎藤隆夫を、むのさんがインタビューしていたとは。生きている歴史を目にしたように感じた。なんだかとても感慨深かった。


私自身の不学を恥じるが、笹本恒子さんのことは全く存じ上げなかった。日本初の女性報道写真家である笹本さんは、とても品があり奥ゆかしい方であった。自由奔放という言葉とは真逆な感じで。このドキュメンタリー作品からしかわからないけど、言いたいことの多くは飲み込んで生きてこられたように感じた。だから写真家になったのだろうか。
饒舌ではない、笹本さんから、もっと教えていただきたいと思いました。(さっそく図書館で本を予約しました!)



さて、私はもっともっと年をとったら、自由になれるんだろうか?
でも、そうなれなくってもいい。言いたい言葉は飲み込んでもいい。ただ、自分の中にある反骨精神みたいな、何かほんのささやかな芯みたいなものだけは失わずにいたい。
それでいいんだと、むのさんも笹本さんも、そう言ってくれる気がする。自分勝手な思い込みだとしても、それでいいんだ。
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