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僕のワンダフル・ライフのnetfilmsのレビュー・感想・評価

僕のワンダフル・ライフ(2017年製作の映画)
3.8
 1960年代のシカゴ、街中で買い物をしていた8歳のイーサン(ブライス・ゲイサー)と母親(ジュリエット・ライランス)は、車の中で脱水症状になったゴールデン・レトリバーの子犬を発見する。鼻から流れ出した白い液体、そのぐったりした表情に母親は窓ガラスを割り、小さなゴールデン・レトリバーを救い出した。イーサンに抱きしめられたゴールデン・レトリバーはその瞬間からかけがえのない間柄になった。孤独な少年が愛犬と出会い、人間として少しずつ成長してゆく様子は、真っ先にジェイ・ラッセルの『マイ・ドッグ・スキップ』を彷彿とさせる。少年と子犬、互いの成長物語は既知の光景ながら、やはり魅力的に映る。自宅でセールスマンを勤める父親(ルーク・カービー)と母親、息子イーサンと愛犬ベイリーの家族はまさに古き良きアメリカ社会の幸せな家庭像に他ならない。やがて高校生になり、アメフト部の未来あるクォーターバックとして活躍し始めたイーサンはベイリーを連れ出したある日、射的ゲームに興じるハンナ(ブリット・ロバートソン)に恋をする。アメ車にアメフトにプロム・パーティ。2人の恋模様は、ロバート・ゼメキスの『アメリカン・グラフィティ』のような70年代を再現する。

 少年イングマル(アントン・グランセリウス)と愛犬シッカンとの絆と悲劇を描いた85年の『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』を代表作とするラッセ・ハルストレムは、その後『ハチ公物語』のリメイク作品である2009年の『HACHI 約束の犬』を経て、三たび犬を題材に映画を撮る。人間の寿命よりも遥かに早く一生が終わる犬たちの「犬生」。ゴールデン・レトリバーに始まり、ジャーマン・シェパード、コーギー、セント・バーナード、オーストラリアン・シェパードへ、ベイリーの魂の御霊は何度でも生まれ変わる。僕らはなぜこの世に生まれ、この家族に育てられるのか?そこに運命の糸はあるのか?イーサンとベイリーの強い絆はやがて大きな奇跡を生む。W・ブルース・キャメロンの原作小説『野良犬トビーの愛すべき転生』は未読だが、イーサンとベイリーの強い絆を断ち切るような中盤のエリー、ティノの挿話がどのくらいの分量を割かれているのか気にかかる。特にエリーの挿話でタッグを組むことになる名脇役カルロス(ジョン・オーティス)とのエピソードが素晴らしい。愛する人を失った男は、少女誘拐事件に警察犬エリーと共に挑むのだが、ラッセ・ハルストレムのベテランらしい画力溢れる重厚な説得力に本筋とは関係なしに唸らされた。ラストに再会を果たすデニス・クエイドと『ツイン・ピークス』のペギー・リプトンの絶妙過ぎる配役と熱演には、犬とは関係なしに思わず涙腺が緩む。
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