聴覚障害を持つ方への理解が深まるのは勿論、猛スピードでノンストップで時間が過ぎてゆく現代社会を生きる自分たちへの警告とも受け取れた。
先へ先への文明社会で、便利さばかりを追求するが故、今更後退する事は至難の業。ならば一度立ち止まってみたらどうだろうか…
音の無い世界、立ち止まった世界で目に映るもの、気付けるものって思いのほか沢山ある。いやあるはずだと投げかれられる。
施設長の言葉が胸に突き刺さる。先ずは受け入れる事、何かを失ったら何かを生む力が芽生えるのだ。今現在何不自由なく暮らしている自分に何がわかる？！って問いかけられたら後ずさるしかない。そして自身が同じ立場に立った時絶望から這い上がれる自信すらない。
けれど柔軟な心さえ失わなければ他人の言葉を受け入れる力があるならば、少なくとも新たな光を見いだせる可能性は感じる。
アカデミー賞でも話題となった今作。“音”による斬新なアプローチは言うまでもなく、当たり前のように備わった機能を突然失われた事の更にその先をも想像させ、考えさせられるラストカットの秀逸さに震えた。
