聞こえないことは、失うことなのかな。無くしたように見えて既に始まってる、みたいなものなのかもしれない。
なにかを失っても補える強さと柔軟な可能性を人はみんな持ってるきがした。
音がなくても、違う音が響く、違う言語が飛び交う鮮やかな世界があるんじゃないかと思わせてくれた。
最後のシーンの彼の目がそう思わせてくれた。
聞こえないじゃなくて、聞こうとしていないだけなのかもしれない。
たとえ耳が聞こえていても、だ。
冒頭の耳が聞こえなくなる始まりは恐ろしく、気が狂いそうになったけれど、終盤には怖さより、確実に全ての見え方が変わった瞬間を受け入れて、また違う豊かさを享受した彼がいるような気さえして嬉しく思った。前より世界の声が近しく聞こえているような表情だった。
実は失ったのじゃなく、次の世界が用意されていただけのことのような気がする。
