このレビューはネタバレを含みます
自分にとって身近なものの死ほど、突然で理不尽であっけない。
それは人間でも動物でも同じだ。
残された者は、死んだものの想いや思い出を背負いながら生き続ける。
また、生きるということは食べることでもある。
生命あるものは食べ続けなければ生き続けることができない。
人生とは荒野を進むように厳しくつらく果てしないものだ。
砂漠の中にあるオアシスばかりにたどり着けるとも限らない。
そんな監督の想いがこの映画「荒野にて」に込められているように感じた。
周囲の人間が汚く醜い利己的な大人ばかりの中で、主人公チャーリーは生き抜くために戦い続ける。
時には一般に犯罪と呼ばれるもの(万引き、窃盗)にも手を染めざるを得ない状況に追い込まれる。
自分や自分の大切なもの(ピート)を守り続けるためには手段など選べないのだ。
生きて、生きて、生き抜いてチャーリーは無事、叔母さんの元にたどり着く。
汚い大人ばかりがチャーリーの周りにいた中で、チャーリーにとって叔母さんはマリアさまのような存在だった。
最後のシーンで走るチャーリー。
自らが犯した罪を償ったあとに街中を走っているのだろうか。
劇中では明示されず、もしかしたら刑務所に1度入る可能性があるかもしれないと曖昧に提示されるだけだった。
街中を走るチャーリーの顔は劇中で1番輝いていた。
彼のこれからの人生に幸多からんことを願う。
~以下、気になった部分~
馬のピートの死があっけなく、悲しむ暇もなかったように感じた。
保健所で殺されるより、最後にチャーリーと旅ができて幸せだったらいいな…。
アメリカ北西部の荒野のシーンが期待していたよりも少なかった。
尺の問題もあるだろうが、もう少し長く荒野の風景を味わいたかった。
あと、アメリカに行ったことがないので具体的な距離が分かりづらいのが残念…。
アメリカに行ってからこの映画を見直すと、より味わえるのではないだろうか。
映画を見終わったあとになんとも言えぬ感情に襲われた。
パンフも買ったので、時間がたってからまた観たいと思う。