【1947年キネマ旬報日本映画ベストテン 第1位】
吉村公三郎の代表作。脚本を新藤兼人が手がけ、チェーホフの『櫻の園』をもとに没落華族を描いた作品。
まず原節子が本当に素晴らしい。輝くような美貌には恐れ入った。これまでみたどの作品の原節子より圧倒的に美しい。しなやかな仕草と上品な言葉遣いがこの作品にも、原節子にもベストマッチしている。大げさでなくオードリー・ヘプバーンに負けていない。
吉村公三郎の流麗な演出とカメラワーク、クラシカルな音楽が実に優雅で上品。没落華族の最後の輝きと哀しみを見事に捉えている。日本映画というよりルキノ・ヴィスコンティの映画をみたかのような感覚。
華族という枠を通して、戦争に負けた日本の「それでも生きていかなければならない」という切実で静かな決意と覚悟を描いている。
優雅で上品、そして哀愁に満ちた作品でとても好き。