たーぼーん

バンコクナイツのたーぼーんのレビュー・感想・評価

バンコクナイツ(2016年製作の映画)
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主人公はラックであり、彼女は「バンコク・ナイツ」全体(?)のリーダーである。彼女は毅然としていて、この作品のテーマであるべきある種類の苦しみ・哀しみを常に抱えている。
ただ、僕はこの作品は、オザワという飄々とした男の冒険譚としても魅力的だなと思う。
ひょっとしたらそれなりに悪人かも知れない彼が、しかし実に僕らが手本とすべき適切な言葉をもって、苦しみに寄り添いながらいくつかのきっかけを頼りに漫遊していく、僕らはそれを見守るだけである。
ラックとオザワも1人で生きる事を何も恐れていなくて、現にこの2人は何らかの方向性がうかがえる程の恋愛関係であったりはしない。ただの友人である。
しかし、オザワの持つさり気なくも相手が受け入れやすい数々の言葉が、この作品の文体であり肌触りである。
本作は、尺が長くて物語の流れに本当に必要な部分なのか疑問に思うシーンが多いという意見もありそうだが(僕は全くそうは思わないけど)、オザワの言葉だけは無駄な部分が全くなくて、それを考えると本当に彼はこの作品におけるちょっとしたヒーローなんだな、、、と、思う。
昨年の邦画で最も素晴らしい作品だったと思う。