監督はデスティン・ダニエル・クレットン。ブリー・ラーソンとは「ショート・ターム」以来の再タッグ。
人気コラムニスト、ジャネット・ウォールズが、自身の貧しい幼少期を赤裸々に綴ったベストセラーを映画化したヒューマンドラマ。
1989年、ニューヨーク。コラムニストのジャネット(ブリー・ラーソン)は結婚を控え、公私共に順調な日々を送っていた。ある日、車道に飛び出したホームレスの男性と遭遇するジャネット。その男性の正体は、彼女の父レックス(ウディ・ハレルソン)だった。
破天荒で、酒浸りで、ホラ吹きで、短気で、粗野で、暴力的。なのに子供達と過ごす時は想像力豊かで、独創的。レックスがこんなにも魅力的に描かれているのは、ジャネット自らが書いた原作とウディ・ハレルソンの演技力に因るものかと。
「いつか、ガラスの城を建てる」と子供達に約束したのに、定職に就かない父。母(ナオミ・ワッツ)は芸術家肌で絵を描いたり、時おり教師の仕事をするだけ。ジャネットの姉、弟、妹らを含めた5人はいつも父親に振り回されている。
子供達は成長するにつれ、こっそりと逃亡資金を貯め、1人、また1人と父の支配から逃れていく。
一番許せなかったのは、ジャネットが進学の為に貯め込んだ貯金箱からレックスがお金を盗んだ事。
途中まで「本当にこの父親だけは許せない」とまで思わされるのに。
最後はきちんと父親の良かった点を描き、ほろりとさせられる。ジャネットの、両親に対する愛憎入り混じる感情が、ドラマを良い塩梅で揺さぶってくれる。
母親の不注意でお腹に火傷の跡が残ったジャネット。
「醜いよね?」と気にする幼い娘。
「お前は醜くない。お腹の火傷の跡は、お前が強いという証だ」
父の励ましの言葉が胸を打つ。
アルコールさえ断つ事が出来ていたなら、彼らはこんなにも苦労する事もなかったのだろう。
最近観た「ウォルト・ディズニーの約束」でも、魅力的だけどアルコール依存症の父親と娘との確執が描かれていて、ストーリーの類似点に驚いた程。
子供と同じ目線で一緒に遊べる父親というのは、誤解を恐れずに言えば、ある種の社会不適合者とも言えるのかも。その手に酒瓶が握られている以上は…。