けんけんさん

新感染 ファイナル・エクスプレスのけんけんさんのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

字幕版をスクリーン観賞。

韓国発ゾンビ映画。
仕事を言い訳に家庭を省みない父とそのせいで父に対し心を閉ざしがちな幼い娘が乗ったプサン行きの新幹線。噛まれると感染し凶暴化するゾンビウイルスがパンデミックした車内は高速移動する檻と化し、二人は生き残る事が出来るのかーーー。

的なストーリーを予想して観賞してたけど、どう考えても無理ゲーな状況でどんなオチになるか読めないのが功を奏して、テンポ良く進む物語と緩急あるスピード感でラストシーンまで飽きずに観ていられた。

主要キャラの、イカツイ剛腕おじさん&ツンデレ妊婦さんも、野球部&女子高生のカップルも、中川家礼二風の悪役自己中オヤジも、なんなら最後まで存在意義が謎なまま散ったホームレスも、全員が良い味出してて、それぞれにちゃんと感情移入出来た。
※高齢姉妹は完全空気だったけど、ドア越しに対面して妹がドアを開放したシーンで起こる、『ある種のスッキリ感』へ導く為だけに存在したんだろうってくらい、あの一瞬だけは輝いてた。だって中川家礼二のあの焦り顔と死亡フラグ立てただけで鳥肌ものだったもん笑

クライマックスに向けての高揚感を演出する為に、この世界においての裏主人公になりつつあったイカツイ剛腕おじさんをあっさり殺したり、大人達の黒い感情と真っ向から衝突しても尚ピュアさを貫き通した野球部&女子高生を途中退場させるのも、個人的にはとてもアリで、もしストーリーの顛末が「主要キャラ皆生き残って辿り着いたプサンは絶望感満載のゾンビ地獄でした」なら何の変哲もないありふれたB級映画で終わるとこだった。※ということは、生き残るのはごく少数で、プサンはゾンビ地獄ではないって事になるんだけど…

このテの話の主人公は物語の性質上、父娘のどちらも生存というのは難しいので、父が娘を守る為に命を捨てる展開は予想してたけど…
その死の間際(正確にはゾンビ化直前の最期の理性パート)で、おとなしく眠る赤ちゃんを抱っこした回想とその娘が現実では自分との今生の別れに絶望して泣き叫ぶ、ってシーンには思わず泣いてしまった。あのシーンで泣かない人は鑑賞中ずっと寝て過ごした人か、極度の親子愛アレルギーの人間くらいだろうなー。僕はどちらとも友達にはなりたくないけど笑

ラストシーンの軍隊兵士の狙撃シーンもハラハラしたし、娘の泣き顔のラストカットも個人的にすごく良かったので、全編通して文句や揚げ足取りは特にありません!

むしろ、走り出す1両列車に大量のゾンビが引き摺られる空撮風のシーンとか、押し寄せるゾンビの雪崩感とか、なんていうか『確実にこれエキストラさんひとりは本当にケガしてるよね!?』みたいな全力投球感は、最初から最後までまさに痛快で、韓国映画の底力を感じた。あと、それなりにグロいシーンの連続だったはずなのにそれをあまり感じなかったのは、日本映画によくある「直接的な痛々しい演出・描写」を削いでいたからだと思うし、それはなかなか嬉かった。(僕にとって行き過ぎたエログロバイオレンスは、観賞後数日はアタマにへばりつくからほんの少しでお腹いっぱいなのです。)

韓国文化や韓国芸能に疎い僕は、「お国柄だなー、なるほど」てプチ感心したり「この俳優出たってことは、この先こんな展開なるな」的な邪推をしなくて済み、すんなり映画に馴染めた。

他の方も書いてたけど、もしこれを日本版リメイクするなら間違いなく大沢たかお一択って、僕は登場2秒で思った。今日以降しばらくは僕の中の大沢たかおのイメージは、藁の盾からこの新感染に見事塗り替えられた。

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