青二歳

株主の青二歳のレビュー・感想・評価

株主(1963年製作の映画)
5.0
オサレ過ぎる…かっこいい…
資本もなく貯金をまるっと株にしちゃアカンし、収入に釣り合わないローンなんてもってのほか…現代でも通じる教訓に満ちたソ連反資本主義プロパガンダアニメーション。
63年にしてサブプライムローンを予言したという解説もあるけど、それはやや大袈裟かな…金融機関の破綻まで描いているわけではないので。でも今作の「住宅ローンを払えなくなってホームレス化」は、サブプライムローンが破綻した時に実際に起きたことなので、予言というのもあながち間違いではない。

【おはなし】アメリカ資本主義の工場労働者は、(ソ連と違って)社員株を買わされ、身の丈に合わないローンを組んでるから豪勢な生活を送っているに過ぎない。
社員株は好景気の時は配当金がはいるが不況になったらもう紙くず。不況になった途端リストラにあい、ローンも払えなくなってしまう。今まで当たり前にあったものは、もう手元にない。もちろん住宅ローンも払えない労働者はホームレスとなり仕事を求め町を歩くばかり…
果ては骨を売り、命がけで危険なカーレースに出る羽目になってしまう労働者。幸福そうに見えたアメリカの労働者は実は虚構であった。

それにつけても、なんてオシャレでかっこいいアニメなんだ…またもやアメリカへの憧憬が伺えるような描写ですが、それは西側から見た傲りかもしれませんのでその言葉は使わないとして…それでも今作のアメリカ文化や街並みは最高にオシャレ。
今作も“射撃場”さながらディストピアの世界観が容赦なくかっこいい。ただ違う点は、SF的なディストピアではなく、よくよく見るとリアリティのあるアメリカ社会に見えてくるところでしょうか。
住宅ローンが払えずホームレス化することも実際21世紀に起きた出来事。骨を売るとは随分いかがわしいけれど、骨格標本なら話は普通のこと。今はレプリカが主流だけど、昔は本物の骨しかなかった。歯科医曰く、日本ではインドのガンジス川で拾って加工された頭蓋骨を、実習のために購入してたと聞きます。カーレースというのもアメリカン・ドリームに命を賭けたと見れば今でもありそうなこと。
アニメーションとしても悪夢のような中毒性があるけれど、現実に沿った寓話として見ると中々に恐ろしい世界で魅入ってしまう。
青二歳

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