吉田ハム

ゴールド/金塊の行方の吉田ハムのレビュー・感想・評価

ゴールド/金塊の行方(2016年製作の映画)
3.8

※ネタバレを含みます※
我らがマシュー・マコノヒーが今度は激太り!?大増量で挑んだ「ゴールド」は、とても半年間の事とは思えないほど高密度な作品だった。
数年前に父親の炭鉱会社を継いで社長になったケニーだったが、経営が傾き会社の拠点をバーに移し、資金繰りに奔走する日々を送っていた。そんな折、以前に仕事で会ったインドネシアの地質学者・マイケルの話を思い出し、縋る思いで飛行機に乗り込む…。
マシュー・マコノヒーと言えば「ダラス・バイヤーズクラブ」が思い浮かぶ。HIVを発症したカウボーイの男が、反HIVの世論に真っ向から立ち向かう…という話であるが、この時のマコノヒーはガリッガリに痩せて迫真の演技を見せつけ、オスカーをモノにした。そして制作にも回った今作も、「反体制的」な映画であった。
ケニーという男はどうしようもなく小者である。でっぷり太った腹、ハゲ頭、大酒飲み。営業に行くシーンなんかはまさしく”怪しいセールスマン”である。成功を手に入れ、パーティーで調子をこくシーンも、やっぱりダマされていたと分かるシーンも徹頭徹尾小者であるのだ。
しかし、彼はそんじょそこらの小者とは違った。それは「信念の強い、そして良い」小者であったことだ。彼の仲間や妻、裏切られてしまうがマイケルまで、彼に振り回されながらも皆最後までついてきていた。彼は仲間の事を思いやれる良い奴であると皆知っていたからである。そして、しぶとい。どんなに結果がでなくとも、マラリラにかかっても地質調査を続け、マイケルを信じた。そして、仮初であるものの成功を掴んだのだ。小者の男が、世間を牛耳る巨大な石油会社や支配者に一矢報いたのだ。
ケニーのやったことは「支配からの脱却」である。その為にもがき、苦しみ、翻弄され、それでもなお噛みついたのだ。最後には全てが虚像であったと知るが、彼を愛した仲間から、その努力に”ご褒美”が送られた。ラストショットの笑顔は、自分の行ったことは間違いであったかもしれないが、無駄ではなかったと分かる達成感のある笑顔であった。
この筋書きは、やはり「ダラス・バイヤーズクラブ」を彷彿とさせる。激ヤセか激太りかの違いはあるものの、戦う人たち全てに送られる応援歌である。例えその戦いが敗北に終わっても、その手元には努力によって手に入れた能力や、支えてくれた仲間たちがいる。この二作品は、戦うことにこそ意味があるというメッセージを教えてくれる、何とも勇気をもらえる映画なのだ。

以下、雑記。
・「ダラス・バイヤーズクラブ」を未鑑賞の方はぜひぜひ!
・マコノヒーは今回もボロボロだったなぁ…本当に素晴らしい演技でした。
・ラストはビックリ!素晴らしい!面白い!上手く落とした!と思った。つまり最高のラストシーン!
・最後に貰った大金はどうしたんだろう…原作も読んでみたいな。
吉田ハム

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