ねぎおSTOPWAR

密偵のねぎおSTOPWARのネタバレレビュー・内容・結末

密偵(2016年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

日本の統治時代の朝鮮、日本総督府の警察として生きる朝鮮人イ ジョンチョル(ソン ガンホ)の話。

2時間半、見応え十分!
もっと日本に対する怨念が溢れる映画かと想像していたが、違いました。
ジョンチョルの上官として出てくる東(鶴見辰吾)もそこまで卑劣に描かれておらず。日本が朝鮮半島を植民地化していた当時、朝鮮の独立を計画するグループと、総督府のはざまで揺れ動くジョンチョルの感情を描いた映画です。

グループのボスがイ ビョンホン、リーダーがコン ユ。同じ朝鮮民族でありながら日本警察の仕事をするジョンチョルの心を揺さぶるわけです。実はそこまでの葛藤はなく、割とシンプルに共鳴。
いやあ観ている側としても「ドンっ!」とイ ビョンホンが登場すると、そのオーラに「おおっ!」となるわけで、なんだかコン ユもソン ガンホさえもビビってるように見えてしまうわけですよ。そこでイ ビョンホンさんに牙をむくやつなんていません!

ここ、夜釣りでの会話、いいシーンでしたねー。黒い夜空と黒い海をバックに、思いを語り駆け引きするイ ビョンホンの鷹のような眼がギラリ。そしてジョンチョルの揺れる表情は暗い画面の右側にバランス悪く映し出されます。いい役者のいい演技はいつまでも観ていたい。

裁判シーンはクライマックスにふさわしいソン ガンホ氏の演技でした。劇中何度となく予告していたように、日本警察として動いていたことを主張するジョンチョル。しかし団のメンバーが横に居並ぶ中、冷静さが失われ始める。次第に嗚咽が漏れる。観ている我々にも複雑な感情が伝わってくる。そして正面から表情を捉え続けるカメラ。すごいすごい。 ・・この時どんな思いが彼にこれを言わせていたのかは、この後わかります。

あと列車内でのシーンの緊迫感たるや凄まじい!!
カメラ位置、画角、編集合わせ技一本!!

素晴らしい作品だと思う一方、
どうしても腑に落ちないのは、最後に東が受け取る手紙。
中身は、冒頭追いつめられ自殺する男の書類と切れた親指なのですが、ジョンチョルが最終的に東を裏切るわけですよ。それをある意味通告する封なのですね。・・さて、ではなぜこの彼の指?本編の中に、そこまでのジョンチョルの思いは描かれていなかったように思うのですよね。なんか特別な意味を感じてしまう出方なんですよね。
それと話の締め方がなあ、歴史だから仕方ないのかもしれませんが、「ジョンチョルという男」の話から逸脱して終わっていくので、ちょっと違和感かなあ。
でも全体に影響するところまではないと思います。トータルで素晴らしいことに変わりはありません。