HAYATO

レインボーのHAYATOのレビュー・感想・評価

レインボー(2015年製作の映画)
3.9
2024年236本目
憧れのSRKを探し求めて
10歳の少女と8歳の盲目の弟が旅に出るロードムービー
両親を亡くし、甲斐性なしの叔父とケチな叔母と一緒に暮らしている姉弟。ある時、10歳の姉・パリーは映画スターのシャー・ルク・カーンが載った「角膜移植提供への協力を呼びかける」ポスターを見かけ、「弟・チョートゥの目を治して欲しい」とカーンに手紙を書くが、その手紙は配送されず、叔父の元へ戻ってきてしまっていた。そんな中、カーンが近くの村で映画撮影しているという噂を聞いたパリは、弟・チョートゥを連れてカーンと直接会いにいくことを決心する。
ベルリン国際映画祭クリスタルベア賞(Generation Kplus部門の最優秀作品賞)、ナショナル・フィルム・アワード最優秀児童映画賞を受賞するなど高い評価を得た作品。Netflixは結構インド映画が充実しているイメージあるな。原題「Dhanak」はヒンディー語で、太陽や月が放つ光彩を意味するそう。
本作で姉弟が会おうとするシャー・ルク・カーンは、インド映画界のスターの中でもとりわけ国際的な知名度を誇る3大カーンの1人。「ボリウッドの皇帝(Baadshah of Bollywood)」、「キング・オブ・ボリウッド(King of Bollywood)」、「キング・カーン(King Khan)」など数々の異名を持ち、世界で最も裕福な俳優の1人であるシャー・ルク・カーンは、積極的な慈善活動家としても知られている。本作において直接的な出番はないが、インド国民にとっての彼の偉大さと人気ぶりがストーリーによく表れている。
インドの美しい文化と広大な砂漠風景を捉えながら、素朴でハートフルなドラマを描き出す本作は、大人びていてしっかり者の姉・パリーと明るくて生意気な弟・チョートゥのコミカルで強固な関係性にスポットを当てて展開される。子供は時々、無茶な約束をしてしまうものだが、パリーはチョートゥが9歳になるまでに目が見えるようになると約束する。チョートゥがそれを無条件に信じているところに、彼らの絆の深さを感じた。
2人の旅路は困難がつきまとうが、道中彼らは温かくて優しい人々と出会う。時に邪魔されることもあったが、個性豊かな大人たちが子供達を助ける様子は見ていて心温まる。アメリカ人の旅人とチョートゥが歌を歌うシーンは特に楽しく、アメリカとインドの音楽がミックスしたような”Dum-A-Dum”の音色が聴き心地抜群。
姉弟を演じた子役はこれが映画デビューとは思えない素晴らしい演技。わんぱくで息ぴったりなやりとりはとても微笑ましく、彼らのおかげで夢を追いかける純粋な気持ちを思い出させてくれた。
劇中でタバコのシーンが出るたび、“Smoking is Injurious to Health”(※喫煙は健康に有害です)と表示されるのがめっちゃノイズで面白かった。調べてみたら、インド映画では登場人物がたばこに火をつけると、喫煙が引き起こす健康被害に関する警告を表示しなくてはならないというルールが存在するらしい。インド映画結構みてきたけど、初めて知った。
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