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ぼくたちのチームのTOTのレビュー・感想・評価

ぼくたちのチーム(2016年製作の映画)
3.8
マチズモが支配する閉鎖的な寄宿学校で出会う、主人公ネッドと転校生コナー。
友とスポーツと音楽、セクシュアリティに向き合い“自分”になる学園コメディ。
最近観た10代のカミングアウトとアウティングを描いた作品『ハートストーン』や『17歳にもなると』ともまた違う優しさ。
「他人の言葉を借りるな」「自分を偽ったら誰が自分になるんだ」なんて台詞がまっすぐ響く。

“ぼく”と“あなた”の対立から“ぼくたち”のチームに融和していく姿はまさに自己形成の過程だ。
監督が自らの内面を反映したというネッドとコナーのバディ関係は、ひとりの人間の2つの側面を表すようで、ネッドが語る自分の中のコナー、またはコナーが自分の中のネッドに語らせるイマジナリーフレンドの物語として見ても面白いかもと思った。
後半の、ネッドがしたコナーへの行為はやっぱりそんな簡単に許せなくないか?ってもやもやしたけど、よくよくネッドは最初から周りからの同じような仕打ちに耐えていて、コナーがそれを助長した面もある。
16歳の残酷さ、2人の誤ち、誤ちを認めて自らの手で正すことの大切さを浮かび上がらせ、ひとりの人間の葛藤を2人に分けた表現と思うと少し、しっくりくる。

ネッド役のフィン・オシェイの大きな耳に屈託無い笑顔とクルクル変わる表情が、パックとかティンクあたりの妖精のようなかわいらしさ。
コナー役ニコラス・ガリツィンは『ハートビート』に引き続き麗しい。今回は上半身裸で楽器ひかないけど麗しい。
彼らを見守る大人の描き方も良いバランスで、特にアンドリュー・スコットの演技はまたしても素晴らしく、アンドリュー・スコット出る映画にハズレなしと確信させる。
あと、マチズモ溢れるラグビーコーチのモー・ダンフォードは『ヴァイキング』のエセルウルフ役に引き続きかわいそうかわいくてよいね…。

原題「Handsome Devil」はThe Smithの同名曲からだが、劇中使用曲も秀逸で、The Shaker HymnやThe Undertones、David Kittのアイリッシュミュージシャンから、ファットボーイ・スリムことノーマン・クックが在籍していたThe Housemartins、Tashcan Sinatras、最後を彩るルーファス・ウェインライトの確かな余韻。安心と信頼のルーファス・ウェインライト…!

この映画の舞台となった厳格なカソリックの国アイルランドは2015年に世界初、国民投票による同性婚が合法化された。
アイルランドで生まれ育った監督が、自分が自分であるためのひとつの道筋と可能性を明るく示してくれる。
その明るさがとても好きだった。
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